電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ【完】

前に立つ勇気が出せない私よりも、ああやってみんなの前で歌っている紡くんたちのほうが、よっぽどすごいよ。

私にも、そんな勇気があればいいのになあ⋯⋯。



「千星、こっち向いて」

「⋯⋯? へぁっ!? は、はひふるのへいかぁ(何するの玲香ぁ)〜⋯⋯」



玲香に呼ばれて横を向くと、玲香の手によって私のほっぺたがつままれた。



「いい? 千星にも勇気はあるのよ。まだそれを表に出せていないだけ。最初の一歩っていうのはね、本当に少しだけだから。千星にもできるの」

「私⋯⋯臆病、だよ?」

「誰がそんなこと言ったの? ⋯⋯自分で言っているんでしょう? 自分が変わるか変わらないかは、自分自身で決めるの。ここで一歩を踏み出せなかったら、一生機会は来ないかもしれないのよ?」



⋯⋯そう、だよね⋯⋯玲香の言う通りだ。

私は、ずっと何を迷っていたんだろう。

自分が変われるか変われないかなんて、私自身が一歩を踏み出すかどうかだけなんだ。

少しだけ勇気を振り絞って、一歩を踏み出す。

⋯⋯ただ、それだけ。



「⋯⋯ねぇ、千星。知ってる? この学園祭にはね、誰でも自由に参加できる自由ステージの時間があるのよ?」



そう言って、玲香は口角をすっと上げた。

美人さんな玲香の顔に、ニヤッと不敵な笑みが浮かび上がる。