電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ【完】

でも⋯⋯昨日見た、ゼリーの上に乗っていたメモを思い出せば合点がいく。

確か、”お兄ちゃんがなんとかしてやる”、って⋯⋯。

お兄ちゃんや紡くんたちの優しさに、思わず涙が出そうになるのをこらえた。



「そう。千星の歌声を聞いた生徒は一人だけだったし、ねいろは地声を公開していない。だから、根拠にするには情報が足りないんじゃないかって」



まさか、こんなところで人見知りでいつも喋ったり歌ったりしていないことが役に立つとは⋯⋯あはは。

できるだけ目立ちたくないっていう想いが強いから、授業や合唱のときもうまく声が出せなかったんだよね⋯⋯。



「だから、噂のことは心配しないで。もし不安だったら、あたしと一緒に回ろ?」

「でも、玲香はクラスの劇があるんじゃ⋯⋯」

「そんなの今はどうでもいいわよ! 千星と学園祭を一緒に楽しめるのは数回しか無いのよ? あたしは、何よりも千星が大事なの」



玲香⋯⋯。



「明日は体調不良が無い限り、あたしがここまで迎えに来るから。だから、早めに準備して待ってなさいっ」

「っ、うんっ⋯⋯!」



まぶたから零れ落ちそうな涙を必死に拭って、私は精一杯の笑顔を玲香に向けた。

明日の学園祭⋯⋯心配な気持ちはほとんど無くなって、いつの間にか楽しみという気持ちでいっぱいになっていた。