そこには誰もいなかった。
だけど音はずっと聞こえてきている。
不思議に感じて理科室の足を踏み入れたとき、人体模型の口が動いていているのが見えた。
『なに、あれ……』
元々視力が弱いカオリはなにかの見間違いじゃないかと人体模型に近づいた。
そのときだった。
人体模型の口から自分のネームがはみ出しているのを見てしまったのだ。
人体模型は確かに口元を動かしてボリボリと音を立てている。
『キャアアア!』
悲鳴をあげて腰をぬかしてしまったカオリを、人体模型が見下ろした。
そしてこう言ったらしい。
『階段から落ちるよ』
と……。



