先生と、時々涙雲


今日は花火大会


「あかりーお待たせ!浴衣めっちゃいいかんじ!」

「唯もかわいいよ〜!暑いけど楽しみっ!」

「あ、そうだ、今日すばる見回りにくるらしいよ〜チャンスチャンス〜!」

「そ、そうなんだ」



私たちは毎年この夏祭りにきていた

ってことは去年も先生ここにきてたのかな

もしかしたらすれ違ってたのかな

「あれ?あそこにいるの相模…と隣にいるイケメン!!おーい!」


「おお!浅香と……藤花じゃん」

「なになにぃ〜あかりの浴衣姿に見惚れてるの〜?」

「ちょっと唯、そんな恥ずかしいよー!隣にいるのは友達?」

「あ、そうそう。中学の同級生」

「どうも、はじめまして、杉田冬馬です。」

「はじめまして、わたし浅香唯です!!せっかくだから4人で回らない?」

目をきらきら輝かせた唯の提案で4人で回ることになった。




「ごめん!あかり、すばるのこともあるのに。わたし冬馬くんがタイプなの!!」

「うん、だと思ったし、先生のことは気にしないで!会えるかもわからないし。」

とは言ったものの、無意識に先生を探す

……リップ塗り直しとこっ。




「じゃあわたし冬馬くんと焼きそば買ってくる!」

「うん、私と相模くんはここでまってるね」

本当唯はすごいなぁ。積極的で、羨ましい。




「なんかごめんね、一緒に回ることになっちゃって。」

「嫌だったら一緒に回ったりしないよ。
藤花、浴衣すげー似合ってる」

「え、ありがとう!相模くん褒め上手!」

「本当に思ってないと俺は言わないっつの!」

こんな時でも考える

先生だったらなんて言ってくれるかな

「唯たち、遅いよね?どこ行ったんだろー…」

「この人混みでここにいる方がみつけにくいし、花火始まるし、ちょっと移動するか。冬馬には連絡しとくから。」

「うん、そうだね」




ーーーカランカラン

「……いてっ」

「どした?足、痛いか?」

「あ、うん、ちょっとね、履き慣れてなくてさー!」

「ベンチまで、乗れよ。」

「えええ!重いからいいよ!恥ずかしいし…」

「痛いんだろ?いいから乗れって」

目の前にしゃがんだから一瞬びっくりした

相模くんは私をおんぶしてくれた

「相模くん、本当に優しいよね。ありがとう!」

「みんなにしてるわけじゃないからな。」

「へへへ、ごめんごめん」

「あ、あいついるし」

ん?……あいつ?



「お、相模!……とおんぶされてんのは藤花か?!
なんだおまえらデートか〜!」



先生に会えて嬉しいはずなのに

まるで悪いことしてるみたいな感覚になった



「はい、デートです」

「え、ええええ?!ちょっと相模くん?!」



「………。そうかー青春だな!楽しめよ!」

先生の表情が一瞬だけ固まった気がした

・・・今の少しの間はなんだったの?

ねぇ先生おねがい

一瞬でもいいから嫌な顔してほしいよ






「ちょっと飲み物買ってくる、すぐ戻るから、絶対ここから動くなよ」

「あ、うん。ありがとう。」

はぁあ〜

さっき、先生に誤解されたかな

私が好きなのは先生なのに。







「すばる先生ちょっといいすか」

「おーどーした、相模1人か?藤花は?」

「藤花のこと好きなの?」

「何言ってんだよ、好きなのは相模だろ〜」

「誤魔化さないで答えろよ」

「……あのなぁ。藤花はかわいい生徒だけど、そう言う目で俺は見てない。」

「本当にそうなんだな?俺、この後告白する。
俺はあいつのことが好きだし、おまえみたいに泣かせたりしない」

「……泣かせたってなんだ」

「あーもういいよ。最後に、我慢できなかったから、じゃあ。」

「あ、おい相模!」








相模くんはなんでさっき

あんなことを言ったのだろう


『ドーーーーーン!!』

うわぁ……綺麗。

先生も見てるのかな、この花火

「藤花おまたせ、花火はじまったな!

………あのさ」

「ん〜?あ、みて!ほらほら綺麗ー!」

「俺、藤花が好きだ」






・・・え!?!?!?







花火の音が鳴ったあと

私は固まったまま

きょとんとした顔で相模くんをみつめる



「返事は今すぐじゃなくていいから。
俺はずっと待ってる。藤花がしんどい時は話聞くし、そばにいたい」

「えっと…その、ごめん、あのわたし…」

「わかってるよ、すばるのこと好きなのも。
てか宣戦布告してきた。」

「ええ?!いつ?!」

「さっき、戻って伝えてきた。」

そうだったんだ

相模くんは優しいし私の変化にすぐに気づく

きっと好きになれたら幸せになれると思う

わかっているのわかってるんだけど

それでも頭に浮かぶのは……先生だよ




「あー、いたー!あかりー!相模ー!
ごめんごめん場所わからなくなっちゃって」

「あかり、どした?なんかあった?」

「う、うん、今度ゆっくり話すね」

「絶対だよ!!」







「気をつけて帰れよー」





帰り道、聞き覚えのある優しい声に振り返る



先生は人気者だから、周りに女子がたくさん


「どこの学校の先生ですか?格好いいー!」

普通にナンパされてるし

はぁ…なんか今日疲れちゃったし、帰ろ。

そう思った瞬間、大きい手のひらで腕をガシッと掴まれた



「藤花!」

「先生…?!」

「ちょっとだけ、時間いいか?」

「あかり、行ってらっしゃい、帰り送ってもらいな〜!」


先生と2人で歩いてるこの道

なんかすっごく幸せ

「花火見れたか?綺麗だったなー!」

「き、綺麗でしたね!」

「浴衣姿もかわいいんだな、藤花」

「え…着て来てよかったです!!」

「っはは、面白いなー」

暗くてよく見えないけど

先生の横顔が好き。

「なんだ、俺に見惚れてチューとかするなよ!」

「な、何言ってるんですか!!」

少し沈黙がつづいて

先生は何を考えてるのかわからないよ

わたし勘違いしちゃうよ……?

「あ、あのさ。相模と付き合うのか?」

え……?

「………なんで、そんなこと聞くんですか?」

「あ、いや、ほら、かわいい教え子の恋のキューピットになってやろうと思って!」

「あぁ…そういうことかぁ。
相模くんはすごくいい人だけど、私他に好きな人がいて」

私のバカ〜!

思わず口が滑ってしまった

「そうなのか。その好きな人とはうまくいきそうか?」

「うーん、どうですかね、うまくはいかないと思います、難しい恋なので…」

「難しい恋かー、高校生は青春だからなぁ、色々と悩んでなんぼだ!」

「先生さっきからわたしの恋バナからかってます?もー!」

「っふ、ごめんごめん、応援してるよ、藤花のことは誰よりもね。」

応援しなくていいよ、先生

「あのね、先生」

「ん?なんだ」

「好きになっちゃいけない人っているの?」

「うーん、俺は半々かな。悲しませるような恋はしたくない」

「悲しませるって?」

「その人のことが好きでも、自分だけの問題じゃないときもあるんだ、社会人になればわかるぞ!」

社会人になるころには

先生のこと忘れられてるのかな

「駅まで送っていくぞーもう遅いし暗いからなー」

先生は一緒に駅まで歩いてくれた

「私に彼氏ができたら、先生嬉しい?」

私ってば、何聞いてるんだろう

「おう!もちろん、ただそいつがいいやつかは見極めてやるぞ!藤花には幸せになって欲しいからな!」

「……………」

返す言葉がなくて

私は黙り込んでしまった

「じゃあまたな!気をつけろよー」

少しでも先生といれたこの夏は

私の大切で大事な思い出になった