話は尽きなかった。
ただ――楽しい。
あの感覚が、少しずつ蘇ってくる。
「カラン」
グラスの中の氷が鳴った。
そろそろ点検をしろ。
アイスコーヒーが、そう教えてくれた気がした。
点検を終え、美香が気にしていたリビングの建具を調整していると、キッチンから声がした。
「ゆう、ご飯食べてく時間あるの?」
「アジフライなら」
冗談混じりに答えた。
建具を調整しながら、キッチンから漂ってくる揚げ物の匂いを吸い込む。
あの日と同じ。
もう、何が出てくるのかは容易に想像できた。
「ごめん、唐揚げ」
「じゃあ、いらないか」
「えっ? あ……」
一瞬の間。
「うそ。アジフライ」
「もう、わかってたでしょ」
そう言いながら、美香は手際よく食事を用意していく。
料理がすべて並ぶ頃には、作業もちょうど終わった。
「いただきます」
席に着く。
箸を入れる。
一口食べる。
やっぱり――過去一、美味い。
アジフライって、こんなに美味かったっけ。
食後には、温かいコーヒー。
そして、パウンドケーキ。
一つひとつが、懐かしさを増していく。
味も。
空気も。
この時間も。
「ほんと……相変わらず素敵だよ」
そう思いながら、心の中で頷いた。
コーヒーを飲みながら、しばらく感傷に浸る。
そして、無意識に視線があの壁へ向いた。
アンティークな額縁。
その中に飾られたモノクロの風景画。
カウンターには、レザーの手帳。
あの時、俺が作った壁。
一年経っても、そこには何も変わらず残っていた。
キッチンから、こっちを見ながら美香が言った。
「この壁……ほんとに作って良かったよ」
「ありがとうね」
壁を見つめたまま、しばらく黙る。
そして美香が、ぽつりと言った。
「ねぇ……アジフライ好き?」
一瞬、頭の中で整理する。
「……え。好きだよ」
「特に美香のアジフライが過去一美味しいから。アジフライの中で一番好き」
質問の意図は分からなかった。
でも、質問されたことには自信満々に答えた。
すると、美香が小さく笑った。
「言って欲しかったな……」
「私も」
その言葉を聞いた瞬間、
俺は何も言えなくなった。
一年経ったのに。
たまにするLINEだけで、充分満たされていた。
そう思っていた。
「……ばか」
心の中で呟く。
俺は自問自答を繰り返しながら、壁から目を離せなくなっていた。
ただ――楽しい。
あの感覚が、少しずつ蘇ってくる。
「カラン」
グラスの中の氷が鳴った。
そろそろ点検をしろ。
アイスコーヒーが、そう教えてくれた気がした。
点検を終え、美香が気にしていたリビングの建具を調整していると、キッチンから声がした。
「ゆう、ご飯食べてく時間あるの?」
「アジフライなら」
冗談混じりに答えた。
建具を調整しながら、キッチンから漂ってくる揚げ物の匂いを吸い込む。
あの日と同じ。
もう、何が出てくるのかは容易に想像できた。
「ごめん、唐揚げ」
「じゃあ、いらないか」
「えっ? あ……」
一瞬の間。
「うそ。アジフライ」
「もう、わかってたでしょ」
そう言いながら、美香は手際よく食事を用意していく。
料理がすべて並ぶ頃には、作業もちょうど終わった。
「いただきます」
席に着く。
箸を入れる。
一口食べる。
やっぱり――過去一、美味い。
アジフライって、こんなに美味かったっけ。
食後には、温かいコーヒー。
そして、パウンドケーキ。
一つひとつが、懐かしさを増していく。
味も。
空気も。
この時間も。
「ほんと……相変わらず素敵だよ」
そう思いながら、心の中で頷いた。
コーヒーを飲みながら、しばらく感傷に浸る。
そして、無意識に視線があの壁へ向いた。
アンティークな額縁。
その中に飾られたモノクロの風景画。
カウンターには、レザーの手帳。
あの時、俺が作った壁。
一年経っても、そこには何も変わらず残っていた。
キッチンから、こっちを見ながら美香が言った。
「この壁……ほんとに作って良かったよ」
「ありがとうね」
壁を見つめたまま、しばらく黙る。
そして美香が、ぽつりと言った。
「ねぇ……アジフライ好き?」
一瞬、頭の中で整理する。
「……え。好きだよ」
「特に美香のアジフライが過去一美味しいから。アジフライの中で一番好き」
質問の意図は分からなかった。
でも、質問されたことには自信満々に答えた。
すると、美香が小さく笑った。
「言って欲しかったな……」
「私も」
その言葉を聞いた瞬間、
俺は何も言えなくなった。
一年経ったのに。
たまにするLINEだけで、充分満たされていた。
そう思っていた。
「……ばか」
心の中で呟く。
俺は自問自答を繰り返しながら、壁から目を離せなくなっていた。



