一年経ったか……
インターホンの前まで来たが、すぐには押せなかった。
時間ぴったりに押す。
これが俺の小さなルールなのに……
一分……いや、三十秒ほどだったろうか。
時間は、もう過ぎていた。
「森下」
表札の脇には、あの日と同じ可愛らしいリース。
変わらないな……
いや。
俺が変わったのかもしれない。
「ヨシ」
小さく息を吐いて、インターホンを押した。
「はーいっ」
……あの日のままだ。
変わらない。
ガチャ。
扉が開き、屈託のない笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりっ」
「お久しぶりです」
思わず敬語になってしまう。
「点検って何するの?」
「えっと……」
「とりあえず、お茶しようよ」
変わらない。
いや……
増してるよ。
あの時よりも……
羊革のスリッパが、再び俺をエスコートしてくれた。
「横浜、やっぱ強いねー」
「聞いてたでしょ? ラジオ」
その言葉だけで、あの夏が蘇る。
あの日。
あの時間。
そして……
あの人との距離。
「うん……聞いてたよ」
「十一奪三振。あの横浜の金子君。イケメンだし、あれは絶対プロいくね」
「そうですね」
なんとか言葉を繋ぐ。
「だよねー。ほんとイケメンだしね」
アイスコーヒーを淹れながら、何もなかったかのように話を続ける。
カラン。
「お待たせっ」
グラスの中で氷が鳴った。
久しぶりに、俺に声を掛けてくれたような気がした。
相変わらず可愛いやつだな……
少しだけ冷静になれた。
だって今日は……
あの森下さんの、一年点検なんだから。
……いや。
美香の家の、一年点検なんだ。
あの日から一年。
俺たちは、何もなかったように笑っている。
でも――
本当に、何もなかったんだろうか。
一年という時間は、
あの日を消すには長すぎて、
思い出にするには……
まだ、短すぎた。
――あの日の話は、『見積もりには書けないもの』で。
インターホンの前まで来たが、すぐには押せなかった。
時間ぴったりに押す。
これが俺の小さなルールなのに……
一分……いや、三十秒ほどだったろうか。
時間は、もう過ぎていた。
「森下」
表札の脇には、あの日と同じ可愛らしいリース。
変わらないな……
いや。
俺が変わったのかもしれない。
「ヨシ」
小さく息を吐いて、インターホンを押した。
「はーいっ」
……あの日のままだ。
変わらない。
ガチャ。
扉が開き、屈託のない笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりっ」
「お久しぶりです」
思わず敬語になってしまう。
「点検って何するの?」
「えっと……」
「とりあえず、お茶しようよ」
変わらない。
いや……
増してるよ。
あの時よりも……
羊革のスリッパが、再び俺をエスコートしてくれた。
「横浜、やっぱ強いねー」
「聞いてたでしょ? ラジオ」
その言葉だけで、あの夏が蘇る。
あの日。
あの時間。
そして……
あの人との距離。
「うん……聞いてたよ」
「十一奪三振。あの横浜の金子君。イケメンだし、あれは絶対プロいくね」
「そうですね」
なんとか言葉を繋ぐ。
「だよねー。ほんとイケメンだしね」
アイスコーヒーを淹れながら、何もなかったかのように話を続ける。
カラン。
「お待たせっ」
グラスの中で氷が鳴った。
久しぶりに、俺に声を掛けてくれたような気がした。
相変わらず可愛いやつだな……
少しだけ冷静になれた。
だって今日は……
あの森下さんの、一年点検なんだから。
……いや。
美香の家の、一年点検なんだ。
あの日から一年。
俺たちは、何もなかったように笑っている。
でも――
本当に、何もなかったんだろうか。
一年という時間は、
あの日を消すには長すぎて、
思い出にするには……
まだ、短すぎた。
――あの日の話は、『見積もりには書けないもの』で。



