リフォーム営業マンの小さなドキドキ短編集 エピソード3

リフォームが終わり、引き渡しをする。

工事中は何度も足を運んだ家も、引き渡しが終われば、そこで俺の仕事はいったん終わる。

そして、その家で新しい生活が始まる。

家は、住み始めてからも少しずつ変化していく。

人の出入りや湿度、乾燥。

季節によって温度も変わる。

木材や建具、クロスなど、さまざまな部材が伸びたり縮んだりする。

「家も呼吸している」

俺はそんなふうに考えている。

逆に、誰も住んでいない空き家が傷んでいくのも、こうした環境の変化が関係しているのだと思う。

だから俺は、リフォームから一年ほど経った頃に、もう一度その家を訪ねる。

一年点検だ。

もちろん、建物の状態を確認するのが一番の目的。

でも、俺にとってはもう一つ意味がある。

一年ぶりの挨拶回りだ。

たいていのお客様は、快く迎えてくれる。

「懐かしいですね」

そんな言葉から始まって、当時の打ち合わせの話になったり、

「ここ、こうして良かったです」

「実際に住んでみたら、こっちのほうが使いやすかったです」

なんて、一年暮らしてみて分かったことを楽しそうに話してくれる。

工事が終わったときには分からなかった、その後の暮らしを聞ける。

これも、リフォーム営業の仕事の醍醐味の一つだと思っている。

もちろん、点検もしっかりする。

キッチンや洗面台のシンク下に水漏れがないか。

トイレや換気扇のフィルターが詰まっていないか。

建具の立て付けは問題ないか。

クロスが剥がれていないか。

築年数によっては、火災警報器の交換時期も確認する。

建物の年齢やリフォームした場所によって、見るところは変わってくる。

そして一年点検が、次の仕事につながることもある。

「実は、ここも気になっていて……」

そんな相談を受けることも少なくない。

だから一年点検は、俺にとって大切な仕事だ。

ただ――

今日話したいのは、点検の話じゃない。

俺が今まで一年点検で経験した中で、

一番ドキドキした出来事。

今日は、その話を聞いてほしい。