「こ、ここが楽屋、だよね...?」
ドク、ドク、ドク、と嘘とは言えない速さで心臓が波打っている。
緊張してることを自覚したくないから、あまり聞きたくないのに。それに反比例するように周りが静かになっているように感じる。
ただ目の前にそびえ立つ、大きな扉を開けたいだけなのだ。
「て、手! 動かない......」
予定はあった。
まずはこの扉を颯爽と開け、クールな自己紹介をし、上手くやっていくという。
それでも、このポンコツな腕はポンコツなプライドに比例して動かない。
「なんで......?」
現実は甘くないんだ。
都合のいい小説のヒロインのような勇気は、都合の良い小説の中のヒロインにしかない。
数分前からドアの前を行ったり来たりを繰り返して、かれこれ10分。
ずっと同じようなことを繰り返して入れないままだ。
「時間とまってえええええ!」
_____ただいま、集合時間の5分前。
そろそろ入らなければ遅刻してしまう。
「なんで目の前の取手を掴んで引くこともできないの.....?そろそろやばいって....」
遅刻したら、どうなる.....?
と、聞かれたら、どうなるのでしょうか。
わかりません。
「いける?代行業者に頼んでも大丈夫?いける?いや、バレるかも。」
緊張の度合いが今までとは全く違う。
緊張という名の材料であのサ⚪︎ラダ ファミリアも完成しそうだ。
でも、相変わらずわたしの腕は動かないままだ。わたしを置いて時間は進んでいく。


