イベントの後は、もう仕事が無いので衣装を返して、私が指定したカフェで落ち合う事に……。
会場には招待客が沢山いて、人の目と耳とカメラが無数にあった。
静かなところで話そうと、私から誘った。
カフェは私の住むマンションの近所にあり、夜遅くまで営業していてたまに来ていた。
ドアを開けて店内を見回すと、もう野津くんが来ていて、私はカウンターでココアを注文した。
出来上がったココアを受け取り、窓際のソファ席に座る野津くんと対面する席に座った。
店内には私達の他には、サラリーマン風の客が、パソコンと睨めっこしていて、後は資格の勉強をしてるのか、教材とノートを広げてる女性客がいるだけ。
心を落ち着けてくれるBGMが流れていて、カフェには優しい雰囲気が漂ってるはずなのだが、……私の心は全く落ち着きが無かった。
これでも女優ですから、動揺してるとか、心の動きを悟られるヘマはしない。
隠す術を身に付けてる。
野津くんの前には、ノンカフェインの紅茶の入ったカップが置かれ甘い香りが鼻を擽った。
「……教えてくれませんか?」
私がココアを一口飲んだところで、そう切り出された。
カップを置き正面から、野津くんの視線を受ける。
野津くんの色素の薄い、美しい瞳に私が映っていた。
「何が気に障ったのか……、」
野津くんは自分が不快な思いをさせて怒らせてしまったと、誤解してる様だった。
野津くんは悪く無くて、私に問題があるのに。
