流し目を送り、視線で落とす。
微笑みを浮かべ、小首を傾げた。
その仕草に合わせ、長い髪が揺れた。
男の目が驚き見開かれ、息を飲んだのが伝わる。
監督からカットが掛かった。
「イイネェ!最高だよっ!」
「ありがとうございます。」
監督に褒められ上機嫌だ。
今回のドラマで私が演じるのは、物語のキーを握る自由奔放な悪女。
男を手玉に取り翻弄する役で女優、黒河咲の新境地って感じ。
小説が原作で演じてみたいと、オーディションを受けて合格した。
役を勝ち取ったのである。
下品な色気は嫌い。
自然と匂い立つ、色気じゃないと。
衣装は肌の露出が少ないが、体のラインが美しく出る物が多く気に入っていた。
隠してる方が想像を掻き立てられる。
「色気爆発してるけど、素敵な恋でもしてるの?」
監督に耳打ちされて、にっこりと笑顔を返す。
「だと良いんですけどね。」
ドラマの放送が始まると、SNSは盛り上がっていた。
私は子役出身で、良い子ちゃんなイメージが強い。
好感度が高いのはありがたいが、女優としては物足りない。
新しい事に挑戦して、色んな面を出さないと。
飽きられたら終わり。
少しは、大人になったところを見せられた。
「八尋と喧嘩してんの?」
永遠から聞かれた。
永遠と映画を観る約束をして、仕事終わりに待ち合わせた。
永遠から野津くんの話題が出るとは、予想しておらず面食らった。
「連絡を取りたいのにずっと捕まらないって、言ってたぞ。」
「……。」
「何かやらかしたなら、熱が冷めるのを待てと助言しといた。」
「……。」
野津くんと永遠は、テレビ局でたまたま顔を合わせたそう。
永遠はバラエティ番組の収録で、野津くんは音楽番組の生放送で来ていたと……。
……連絡を取りたいって、私に何の用があるのか。
普通に仕事してると、同じ業界にいるとは言え、女優とアイドルは、顔を合わせる機会は滅多に無かった。
「野津、くん……?」
野津くんの目は、色素の薄い茶色。
カラーコンタクトをしてるのでは無く、生まれ付きだと。
髪も染めてないのに、明るい茶色をしていた。
野津くんは何も言わないが、距離を詰められ私の背中は壁に当たった。
もう逃げ場が無い。
野津くんの影で覆われた。
身長差があるので見下ろされ、顔が近付きキスされると思った。
焦らす様にゆっくりで、避けようと思えば避けられるが、私の体は動かなかった。
唇が重なる前にハッと目が覚めた。
「……。」
自分の部屋のベッドの上。
……夢オチ。
エッチな夢を初めて見た。
思春期の男の子じゃないんだからと、羞恥心で叫びたくなった。
