遼河さんが。
わずかに息を止めた。
言ってから。
急に恥ずかしくなる。
「……今だけ」
慌てて付け足す。
「今だけでいいから」
「綾乃」
「何」
「今だけじゃない」
顔を上げた。
遼河さんが。
まっすぐ私を見ていた。
「俺は最初から、どこにも行ってない」
胸の奥へ。
その言葉が。
静かに落ちた。
意味を全部理解するには。
今の頭は。
少し酔いすぎている。
でも。
何となく。
泣きそうになった。
「……ずるい」
「何が」
「そういうこと言うの」
「事実だ」
「……知らない」
もう。
何も考えたくなくて。
私はまた。
遼河さんの肩へ頭を預けた。
あたたかい。
それだけで。
今はよかった。
根拠なんて。
最初から何一つなかった。
それなのに私は。
存在しない婚約を信じて。
十三年間。
一人で勝手に諦め続けていた。
そして。
その根拠のない攻防戦の先で。
諦めたはずの気持ちが。
もう一度。
静かに息を吹き返している。
好きだとは。
まだ。
言えない。
どうしても。
そこだけは。
言えなかった。
けれど。
離れたくないとは。
言ってしまった。
それだけで。
今夜は。
もう十分だった。
少なくとも。
十三年間。
ずっと閉ざしていた扉は。
ほんの少しだけ。
確かに。
開いてしまったのだから。
その先で待っているものを。
この時の私は。
まだ。
知らなかった。
わずかに息を止めた。
言ってから。
急に恥ずかしくなる。
「……今だけ」
慌てて付け足す。
「今だけでいいから」
「綾乃」
「何」
「今だけじゃない」
顔を上げた。
遼河さんが。
まっすぐ私を見ていた。
「俺は最初から、どこにも行ってない」
胸の奥へ。
その言葉が。
静かに落ちた。
意味を全部理解するには。
今の頭は。
少し酔いすぎている。
でも。
何となく。
泣きそうになった。
「……ずるい」
「何が」
「そういうこと言うの」
「事実だ」
「……知らない」
もう。
何も考えたくなくて。
私はまた。
遼河さんの肩へ頭を預けた。
あたたかい。
それだけで。
今はよかった。
根拠なんて。
最初から何一つなかった。
それなのに私は。
存在しない婚約を信じて。
十三年間。
一人で勝手に諦め続けていた。
そして。
その根拠のない攻防戦の先で。
諦めたはずの気持ちが。
もう一度。
静かに息を吹き返している。
好きだとは。
まだ。
言えない。
どうしても。
そこだけは。
言えなかった。
けれど。
離れたくないとは。
言ってしまった。
それだけで。
今夜は。
もう十分だった。
少なくとも。
十三年間。
ずっと閉ざしていた扉は。
ほんの少しだけ。
確かに。
開いてしまったのだから。
その先で待っているものを。
この時の私は。
まだ。
知らなかった。
