「婚約も?」
「ない」
「でも……蘭、ずっと言ってた」
「蘭さんが何を言っていたかは知らない。でも、俺が受け入れた事実は一つもない」
迷いなく。
そう言われた。
嬉しい。
はずなのに。
胸の奥は。
それだけでは済まなかった。
「……じゃあ」
喉が詰まる。
「じゃあ……何だったの」
「綾乃?」
「私……」
言いたい。
でも。
言えない。
好きだった。
ずっと。
ただそれだけなのに。
その言葉だけが。
どうしても出てこない。
「私……その……」
「うん」
「だって……遼河さんが……蘭の……だと思って」
「違う」
「だから……私……」
続かない。
嬉しいのか。
悔しいのか。
泣きたいのか。
分からなかった。
十三年間。
当たり前だと思っていたものが。
最初から、どこにも存在していなかった。
「……ばかみたい」
ぽつりと。
漏れた。
「何が」
「私」
「何で」
「だって……ずっと……」
また。
止まる。
好きだった。
言えばいいのに。
たったそれだけなのに。
「ずっと……何だ」
遼河さんの声が。
少しだけ柔らかくなる。
私は。
しばらく黙って。
それから。
首を振った。
「……言わない」
「何で」
「言えないから」
「今さら?」
「今さらだから……」
自分でも。
何を言っているのか分からない。
でも。
遼河さんは笑わなかった。
「じゃあ、無理に言わなくていい」
その言葉が。
余計に。
胸に刺さった。
優しくされたら。
もっと言いたくなるのに。
もっと。
言えなくなる。
私は。
遼河さんの袖を少し強く握った。
「……でも」
「うん」
「どこにも行かないで」
「ない」
「でも……蘭、ずっと言ってた」
「蘭さんが何を言っていたかは知らない。でも、俺が受け入れた事実は一つもない」
迷いなく。
そう言われた。
嬉しい。
はずなのに。
胸の奥は。
それだけでは済まなかった。
「……じゃあ」
喉が詰まる。
「じゃあ……何だったの」
「綾乃?」
「私……」
言いたい。
でも。
言えない。
好きだった。
ずっと。
ただそれだけなのに。
その言葉だけが。
どうしても出てこない。
「私……その……」
「うん」
「だって……遼河さんが……蘭の……だと思って」
「違う」
「だから……私……」
続かない。
嬉しいのか。
悔しいのか。
泣きたいのか。
分からなかった。
十三年間。
当たり前だと思っていたものが。
最初から、どこにも存在していなかった。
「……ばかみたい」
ぽつりと。
漏れた。
「何が」
「私」
「何で」
「だって……ずっと……」
また。
止まる。
好きだった。
言えばいいのに。
たったそれだけなのに。
「ずっと……何だ」
遼河さんの声が。
少しだけ柔らかくなる。
私は。
しばらく黙って。
それから。
首を振った。
「……言わない」
「何で」
「言えないから」
「今さら?」
「今さらだから……」
自分でも。
何を言っているのか分からない。
でも。
遼河さんは笑わなかった。
「じゃあ、無理に言わなくていい」
その言葉が。
余計に。
胸に刺さった。
優しくされたら。
もっと言いたくなるのに。
もっと。
言えなくなる。
私は。
遼河さんの袖を少し強く握った。
「……でも」
「うん」
「どこにも行かないで」
