『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

しばらく私を見ていた遼河さんは。

何も言わず。

隣へ座った。

近い。

今度は。

本当に近い。

肩が触れそうで。

触れない。

そのわずかな隙間が。

妙に気になる。

だから。

少しだけ。

自分から寄った。

「……綾乃」

「何」

「かなり酔ってるな」

「知ってる」

「自覚あるのか」

「あるもん」

「そうは見えない」

「うるさい」

そのまま。

遼河さんの肩へ。

そっと頭を預ける。

一瞬。

身体が固くなったのが分かった。

でも。

離されなかった。

それだけで。

満足だった。

「……遼河さん」

「何だ」

「蘭と……」

そこまで言って。

止まる。

何を聞きたいの。

私。

婚約?

昔のこと?

十三歳の時に聞いた言葉?

全部。

頭の中にはあるのに。

うまく繋がらない。

「蘭が?」

「……ほんとに、何にもないの?」

静かになった。

聞かなきゃよかった。

そう思った瞬間。

遼河さんが答えた。

「何もない」

「……何も?」

「一度もない」