警戒はした。
けれど。
仕事が始まれば、そればかり気にしているわけにもいかない。
海外からの招待客への対応。
関係者への挨拶。
遼河さんの予定確認。
次々と声をかけられているうちに。
二人への意識は、少しずつ薄れていった。
だから。
近くを通ったスタッフから差し出されたグラスにも。
何の疑問も持たなかった。
軽いカクテル。
そう聞いていた。
一口。
二口。
それだけ。
なのに。
しばらくして。
身体の奥から、じわじわと熱が広がり始めた。
「……ん?」
頬が熱い。
頭も少し浮いているような感覚がする。
足元まで。
わずかに頼りない。
近くのテーブルへ手をついた。
おかしい。
こんな酔い方。
したことがない。
「綾乃?」
聞き慣れた声に。
顔を上げた。
遼河さんが、こちらへ歩いてくる。
「どうした」
「……何でもない」
「何でもない顔じゃない」
すぐ近くまで来ると。
私の顔を覗き込んだ。
近い。
そう思った途端。
なぜか。
急に安心した。
「ちょっとだけ……酔ったかも」
「何杯飲んだ」
「んー……」
考える。
「一杯……じゃない。二口?」
「二口?」
遼河さんの表情が変わった。
すぐに私の手からグラスを取り上げる。
「ジュリアン」
短い声だけで。
ジュリアンも何かを察した。
その時だった。
「大丈夫ですか?」
知らない男性が近づいてくる。
「かなりお辛そうですし、別室で少し休まれた方が――」
そう言って。
私へ手を伸ばした。
ぼんやりした頭で、その手を見つめる。
けれど。
触れるより先に。
身体が後ろへ引かれた。
「必要ない」
低い声。
気づけば。
私は遼河さんの腕の中にいた。
腰を支える腕。
背中に伝わる体温。
「あ……」
「綾乃、俺のそばにいろ」
耳元近くでそう言われて。
胸が変な音を立てた。
「……うん」
素直に頷いてしまった。
いつもなら。
そんな返事しないのに。
でも。
今は。
離れたくなかった。
男性が何か言い訳をしている。
ジュリアンが警備へ連絡している。
周囲が慌ただしくなる中。
私は。
遼河さんの腕を、そっと掴んだ。
「綾乃?」
「……ここにいて」
けれど。
仕事が始まれば、そればかり気にしているわけにもいかない。
海外からの招待客への対応。
関係者への挨拶。
遼河さんの予定確認。
次々と声をかけられているうちに。
二人への意識は、少しずつ薄れていった。
だから。
近くを通ったスタッフから差し出されたグラスにも。
何の疑問も持たなかった。
軽いカクテル。
そう聞いていた。
一口。
二口。
それだけ。
なのに。
しばらくして。
身体の奥から、じわじわと熱が広がり始めた。
「……ん?」
頬が熱い。
頭も少し浮いているような感覚がする。
足元まで。
わずかに頼りない。
近くのテーブルへ手をついた。
おかしい。
こんな酔い方。
したことがない。
「綾乃?」
聞き慣れた声に。
顔を上げた。
遼河さんが、こちらへ歩いてくる。
「どうした」
「……何でもない」
「何でもない顔じゃない」
すぐ近くまで来ると。
私の顔を覗き込んだ。
近い。
そう思った途端。
なぜか。
急に安心した。
「ちょっとだけ……酔ったかも」
「何杯飲んだ」
「んー……」
考える。
「一杯……じゃない。二口?」
「二口?」
遼河さんの表情が変わった。
すぐに私の手からグラスを取り上げる。
「ジュリアン」
短い声だけで。
ジュリアンも何かを察した。
その時だった。
「大丈夫ですか?」
知らない男性が近づいてくる。
「かなりお辛そうですし、別室で少し休まれた方が――」
そう言って。
私へ手を伸ばした。
ぼんやりした頭で、その手を見つめる。
けれど。
触れるより先に。
身体が後ろへ引かれた。
「必要ない」
低い声。
気づけば。
私は遼河さんの腕の中にいた。
腰を支える腕。
背中に伝わる体温。
「あ……」
「綾乃、俺のそばにいろ」
耳元近くでそう言われて。
胸が変な音を立てた。
「……うん」
素直に頷いてしまった。
いつもなら。
そんな返事しないのに。
でも。
今は。
離れたくなかった。
男性が何か言い訳をしている。
ジュリアンが警備へ連絡している。
周囲が慌ただしくなる中。
私は。
遼河さんの腕を、そっと掴んだ。
「綾乃?」
「……ここにいて」
