蘭の表情が、わずかに強張った。
「遼河さん本人が、はっきり否定したでしょう。あなたとの婚約を一度も受け入れていない。ご両親も了承していない。公の場で、本人がそう言った」
「でも――」
「でもじゃない」
声は荒げなかった。
その必要がない。
「それ以上、何をどう解釈したら、まだ婚約話が残ってるの?」
蘭の目が揺れる。
でも。
すぐに私を睨んだ。
「お姉様がいるからでしょう」
「何が?」
「お姉様が、遼河さんのそばにいるから」
「仕事です」
「本当に?」
少し声を落とし。
蘭が言った。
「お姉様、昔から遼河さんのこと好きだったでしょう?」
胸が一度。
大きく鳴った。
十三歳の頃。
誰にも言わなかった気持ち。
まさか、気づいていたのか。
そう思ったのも束の間。
「だから私の邪魔してたんでしょう?」
その一言で。
逆に冷静になった。
違う。
この人は。
何も知らない。
ただ。
自分が欲しいものを手に入れられない理由を、全部私のせいにしているだけ。
「蘭」
私は静かに名前を呼んだ。
「私はあなたの邪魔なんて、一度もしてない」
むしろ。
あの頃の私は、自分から離れた。
自分の気持ちまで閉じ込めた。
けれど。
今さら。
それを蘭へ理解してもらおうとは思わない。
「それより、これ以上仕事先まで追いかけてきて、業務を邪魔するのはやめて」
「追いかけてなんか――」
「一回なら偶然。二回でも、まだ偶然かもしれない。でも、これで何回目?」
蘭は答えなかった。
「会社にも来たよね」
「会いに行っただけでしょう」
「アポイントなしでCEOへ?」
「昔から知ってるんだから」
「だから何?」
自分でも驚くほど。
声は落ち着いていた。
ここは鷹宮家ではない。
私は、自分の仕事をしている。
一年かけて。
自分の力で作った居場所にいる。
家族だから。
妹だから。
昔から知っているから。
そんな理由で、勝手に踏み込まれる筋合いはない。
「次に同じことをしたら、会社として対応してもらいます」
「脅してるの?」
「警告してるの」
蘭の顔が引きつる。
「必要なら、弁護士を通すから」
「遼河さん本人が、はっきり否定したでしょう。あなたとの婚約を一度も受け入れていない。ご両親も了承していない。公の場で、本人がそう言った」
「でも――」
「でもじゃない」
声は荒げなかった。
その必要がない。
「それ以上、何をどう解釈したら、まだ婚約話が残ってるの?」
蘭の目が揺れる。
でも。
すぐに私を睨んだ。
「お姉様がいるからでしょう」
「何が?」
「お姉様が、遼河さんのそばにいるから」
「仕事です」
「本当に?」
少し声を落とし。
蘭が言った。
「お姉様、昔から遼河さんのこと好きだったでしょう?」
胸が一度。
大きく鳴った。
十三歳の頃。
誰にも言わなかった気持ち。
まさか、気づいていたのか。
そう思ったのも束の間。
「だから私の邪魔してたんでしょう?」
その一言で。
逆に冷静になった。
違う。
この人は。
何も知らない。
ただ。
自分が欲しいものを手に入れられない理由を、全部私のせいにしているだけ。
「蘭」
私は静かに名前を呼んだ。
「私はあなたの邪魔なんて、一度もしてない」
むしろ。
あの頃の私は、自分から離れた。
自分の気持ちまで閉じ込めた。
けれど。
今さら。
それを蘭へ理解してもらおうとは思わない。
「それより、これ以上仕事先まで追いかけてきて、業務を邪魔するのはやめて」
「追いかけてなんか――」
「一回なら偶然。二回でも、まだ偶然かもしれない。でも、これで何回目?」
蘭は答えなかった。
「会社にも来たよね」
「会いに行っただけでしょう」
「アポイントなしでCEOへ?」
「昔から知ってるんだから」
「だから何?」
自分でも驚くほど。
声は落ち着いていた。
ここは鷹宮家ではない。
私は、自分の仕事をしている。
一年かけて。
自分の力で作った居場所にいる。
家族だから。
妹だから。
昔から知っているから。
そんな理由で、勝手に踏み込まれる筋合いはない。
「次に同じことをしたら、会社として対応してもらいます」
「脅してるの?」
「警告してるの」
蘭の顔が引きつる。
「必要なら、弁護士を通すから」
