『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

全員。

黙った。

「……こんな表示ありました?」

私が聞く。

「通常はあります。ただし、ここまで早く警備要請へ移行する設定ではありません」

城之内さん。

全員の視線が。

真崎さんへ向く。

本人は平然としている。

「反応速度を上げました」

「やっぱり触ったんじゃないですか!」

思わず声が出た。

「侵入リスクへの対応です」

「まだ侵入してません!」

「だから侵入される前に止めます」

強い。

その時。

エントランスに短い警告音が鳴った。

同時に、私たちの端末にも赤い表示が出る。

《SECURITY ALERT》

来訪者:鷹宮 蘭

面会対象:代表取締役CEO 藤和遼河

状態:退館要求拒否

警備担当へ通知済み

さらに。

《退館拒否、または入館ゲートへの不正接触を確認した場合、必要に応じて関係機関への通報を行います》

数秒。

全員無言。

それから。

一ノ瀬さんが。

「えげつない」

白鳥さん。

「好きだわ、このシステム」

笹倉さん。

「真崎、お前、本当に何した」

「セキュリティ強化です」

「今日?」

「はい」

「この人を相手に?」

「実地確認です」

「人で試すな!」

とうとう白鳥さんが笑い、一ノ瀬さんも隠す気をなくした。

私は、画面の向こうで固まる蘭を見ながら、ただ呆れた。

「……何してんの、あの子」

本当に。

それしか出てこない。

城之内さんがこめかみを押さえる。

「もう十分でしょう。真崎さん、これ以上は――」

そこへ警備担当者が現れ、蘭へ退館を促した。

AI応答。

映像。

音声。

面会拒否。

退館要求。

すべて記録済み。

逃げ道はない。

真崎さんがさらりと言った。

「ログ保存しました」

「保存まで?」

「当然です」

「全部?」

「映像、音声、操作履歴、AI応答履歴、時刻情報」

一ノ瀬さん。

「完璧」

白鳥さん。

「後から“そんなことしてません”は無理ね」

笹倉さん。

「お前ら楽しむな」

言いながら。

本人も画面から離れない。

城之内さんが、とうとう大きく息を吐いた。

「……もう好きにしてください」

諦めた。

その時。

秘書課の奥から遼河さんが戻ってきた。

会議を終えたらしい。

普段ならすぐ予定を確認するのに、今日は秘書課へ人が集まりすぎている状況を見て止まった。

「……何をしてる」

代表して。

私が端末を指した。

「蘭が来ました」

遼河さんが画面を見る。

ちょうど警備担当に促され、蘭がエントランスから出ていくところだった。

「アポイントは?」

「ありません」

「断ったのか」

「AIが」

「ならいい」

それだけ。

本当に。

それだけ。

「それだけ?」

「何が」

「会社まで来たんですよ?」

「見れば分かる」

「しかも、あんなことになって」

遼河さんは赤い警告表示を見て。

次に。

真崎さんを見た。

「お前、何した」

「改善です」

「そうか」

「納得するんですか!」

思わず突っ込んだ。

「侵入されてないなら問題ない」

「そこ?」

一ノ瀬さんが笑う。

白鳥さんも、もう完全に楽しんでいる。

笹倉さんだけが、まだ真崎さんへ言っていた。

「で、お前、企業戦略の案件は?」

「処理済みです」

「いつ?」

「朝」

笹倉さんが止まる。

「……じゃあ何で俺が探してたんだ」

「探す必要はなかったですね」

「お前が席にいれば探さないんだよ!」

秘書課に笑いが起きた。

蘭の最初のアポなし来社は。

こうして。

最新のAI受付と。

途中から明らかに面白がっている真崎さんによって。

完璧に門前払いとなった。