『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

「だから、本人に確認すれば分かるでしょう!」

音声まで入る。

白鳥さんが呟く。

「すごいわね」

一ノ瀬さんも頷く。

「AI相手に押し切る気だ」

笹倉さんまで、いつの間にか画面を見ていた。

AIは蘭の勢いなど一切気にせず、

《当社では、未登録来訪者からの要請に基づき、CEO本人へ面会確認を取り次ぐことはありません》

「私は客よ!」

一ノ瀬さんが。

「いや、予約ないから客でもないよね」

「実況しないでください」

城之内さん。

「でも正論よ」

白鳥さん。

「白鳥さんまで乗らないでください」

さらに蘭が声を上げた。

「私は鷹宮綾乃の妹なの! お姉様に確認すれば分かるでしょう!」

AI。

《ご家族・ご友人であることは、面会権限を意味しません》

一ノ瀬さん。

「家族カード無効」

「実況しないでください」

城之内さん。

でも。

誰も帰らない。

《藤和CEOご本人からの事前承認、または登録済みアポイントを取得のうえ、改めてお越しください》

「だから本人に聞きなさいよ!」

そこで。

AIの表示が変わった。

《同一内容の要求を三回確認しました》

私は少し眉を寄せた。

「……三回?」

真崎さんの指が、キーボードの上を動いている。

「真崎さん」

城之内さんの目が細くなった。

「今、何かしました?」

「セキュリティ対応を一段階上げました」

「そんなもの、勝手に上げられるんですか?」

「管理権限があります」

「なぜ今」

「必要だと判断したので」

一ノ瀬さんが吹き出し、白鳥さんも口元を押さえる。

笹倉さんが真崎さんの画面を覗き込んだ。

「お前、絶対楽しんでるだろ」

「業務です」

「顔が無表情だから余計分からん!」

真崎さんは気にしない。

画面の向こうで、蘭がとうとう腕を組んだ。

「私は帰らないから!」

その瞬間。

AIの表示が切り替わった。

《退館要求を拒否されました》

「……え?」

蘭が固まる。

《これ以上の滞留、面会要求、入館ゲートへの接触は、業務妨害行為として記録されます》

白鳥さん。

「強い」

一ノ瀬さん。

「絶対真崎だ」

笹倉さん。

「真崎、やりすぎるなよ」

「規定範囲内です」

「本当か?」

「たぶん」

「たぶんって言ったぞ!」

城之内さんが嫌な顔をした。

「真崎さん」

「はい」

「通常運用の範囲ですよね?」

少し間。

「拡張運用です」

「何ですか、それ」

「今後必要になるかもしれない運用です」

「今後の話を今試さないでください」

正論。

けれど。

真崎さんは気にしない。

蘭は、なおも画面へ向かって言い返す。

「何よそれ! 私は帰らないって言ってるでしょう!」

一拍。

《警備担当者が向かっています》