「鷹宮さん」
城之内さんが静かに言う。
「顔に出ています」
「何がです?」
「少し楽しんでますよね」
「まさか」
否定した、その時。
「何これ」
横から一ノ瀬さんの声がした。
私はゆっくり顔を上げる。
「……何でいるんですか」
「受付がセキュリティ対応に切り替わったって通知が来たから」
アポイントなしでCEOへの面会を繰り返し要求。
しかも来訪者は、先日のパーティーで盛大に婚約話を否定された蘭。
一定回数以上の要求が繰り返された時点で、関係部署の管理者端末にも警告が共有されたらしい。
知っていること自体は、おかしくない。
問題は。
なぜ自分の席ではなく、わざわざ秘書課まで来たのか。
「自分の端末で見られますよね?」
「見られるよ」
「じゃあ何で」
「こっちの方が面白そうだから」
言い切った。
「一ノ瀬さん」
城之内さんが低い声で呼ぶ。
「仕事へ戻ってください」
「あとちょっと」
「戻ってください」
「はいはい」
返事だけ。
動かない。
さらに。
「何してるの?」
今度は白鳥さん。
「……白鳥さんまで」
「総務にも通知が来たから見に来たの」
そこまでは分かる。
でも。
顔が楽しそうなのは、どういうこと。
「白鳥さんも戻ってください」
城之内さんが言う。
「まだ何もしてないでしょう」
「だからです。これ以上、人を増やしたくありません」
その言葉が終わる前に。
秘書課の入口から。
「真崎ー!」
声が響いた。
笹倉さん。
「真崎、どこ行った!」
また探してる。
笹倉さんにとって、真崎さんはほぼ必需品。
なのに本人は、通常の自席にほとんどいない。
「こっちにいるんじゃないですか?」
一ノ瀬さんが言う。
「何でだよ」
「面白いこと起きてるから」
「だから何でそれで真崎が――」
笹倉さんが秘書課へ入ってきて。
止まった。
城之内さんの席の横。
普通に端末を開いている人影。
「……真崎」
いた。
いつから。
「何ですか」
真崎さんが平然と顔を上げる。
「お前、いつからここにいる」
「少し前からです」
「自席は?」
「あります」
「そういう意味じゃない!」
一ノ瀬さんが横を向いて笑いを堪え、白鳥さんはすでに完全に楽しんでいる。
城之内さんだけが、頭を抱えそうな顔をしていた。
「皆さん」
静かな声。
「なぜ秘書課に集まっているんですか」
誰も答えない。
答えなくても理由は一つ。
面白そうだから。
その時。
真崎さんの端末に、受付映像が大きく表示された。
私たちの画面にも、権限に応じて同じ映像が共有される。
エントランスで、蘭が明らかに苛立った顔をしていた。
城之内さんが静かに言う。
「顔に出ています」
「何がです?」
「少し楽しんでますよね」
「まさか」
否定した、その時。
「何これ」
横から一ノ瀬さんの声がした。
私はゆっくり顔を上げる。
「……何でいるんですか」
「受付がセキュリティ対応に切り替わったって通知が来たから」
アポイントなしでCEOへの面会を繰り返し要求。
しかも来訪者は、先日のパーティーで盛大に婚約話を否定された蘭。
一定回数以上の要求が繰り返された時点で、関係部署の管理者端末にも警告が共有されたらしい。
知っていること自体は、おかしくない。
問題は。
なぜ自分の席ではなく、わざわざ秘書課まで来たのか。
「自分の端末で見られますよね?」
「見られるよ」
「じゃあ何で」
「こっちの方が面白そうだから」
言い切った。
「一ノ瀬さん」
城之内さんが低い声で呼ぶ。
「仕事へ戻ってください」
「あとちょっと」
「戻ってください」
「はいはい」
返事だけ。
動かない。
さらに。
「何してるの?」
今度は白鳥さん。
「……白鳥さんまで」
「総務にも通知が来たから見に来たの」
そこまでは分かる。
でも。
顔が楽しそうなのは、どういうこと。
「白鳥さんも戻ってください」
城之内さんが言う。
「まだ何もしてないでしょう」
「だからです。これ以上、人を増やしたくありません」
その言葉が終わる前に。
秘書課の入口から。
「真崎ー!」
声が響いた。
笹倉さん。
「真崎、どこ行った!」
また探してる。
笹倉さんにとって、真崎さんはほぼ必需品。
なのに本人は、通常の自席にほとんどいない。
「こっちにいるんじゃないですか?」
一ノ瀬さんが言う。
「何でだよ」
「面白いこと起きてるから」
「だから何でそれで真崎が――」
笹倉さんが秘書課へ入ってきて。
止まった。
城之内さんの席の横。
普通に端末を開いている人影。
「……真崎」
いた。
いつから。
「何ですか」
真崎さんが平然と顔を上げる。
「お前、いつからここにいる」
「少し前からです」
「自席は?」
「あります」
「そういう意味じゃない!」
一ノ瀬さんが横を向いて笑いを堪え、白鳥さんはすでに完全に楽しんでいる。
城之内さんだけが、頭を抱えそうな顔をしていた。
「皆さん」
静かな声。
「なぜ秘書課に集まっているんですか」
誰も答えない。
答えなくても理由は一つ。
面白そうだから。
その時。
真崎さんの端末に、受付映像が大きく表示された。
私たちの画面にも、権限に応じて同じ映像が共有される。
エントランスで、蘭が明らかに苛立った顔をしていた。
