『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

実際に顔を合わせるのは、日本を離れて以来だった。

六年近くぶり。

二人とも、一見したところ何も変わっていない。

高価そうなドレスに、隙のない化粧。

周囲へ向ける上品な笑顔。

外では誰が見ても、鷹宮家の夫人とその娘。

六年近く前までの私なら。

その姿を見つけただけで、身体が強張っていたと思う。

けれど今、胸に浮かんだ感情は恐怖ではなかった。

ただ。

面倒。

それだけだった。

「あー……いた」

小さく呟く。

ジュリアンが隣へ来た。

“They’re here.”

――いたね。

「見れば分かる」

その時。

蘭がこちらを見た。

最初は、私だと分からなかったのだろう。

視線が一度通り過ぎる。

けれど。

すぐに戻ってきた。

今度は、はっきりと私の顔を見ている。

そして。

目を大きく見開いた。

隣にいる早紀子さんの腕を掴み、何かを伝える。

早紀子さんも振り返った。

私を見た瞬間。

笑顔が消えた。

ほんの一瞬だった。

すぐに取り繕ったけれど。

私は、その瞬間を見逃さなかった。

「来るよ」

ジュリアンが小声で言った。

“Don’t be alone.”

――一人になるなよ。

「分かってる」

二人がこちらへ向かってくる。

途中から、蘭の歩く速度が明らかに速くなった。

そして。

私の前へ来るなり声を上げた。

「お姉様!」