『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

志水さんは。

しばらく私を見つめたあと。

静かに答えた。

「真悠子様の元でございます」

息が止まった。

「……え?」

お母様?

すぐには。

理解できなかった。

「お父様が……お母様のところへ?」

「はい」

言葉を失った。

長い年月。

夫婦として暮らすこともなく。

それぞれ別の人生を歩いてきた二人。

その母が。

今。

お父様を受け入れる?

「真悠子様ご自身からのお申し出です」

志水さんは続けた。

「治療環境については、トーマス様が全面的に手配されています。医療面だけではなく、警備、移動、滞在場所を含めて、外部から所在を追われる可能性を極力排除した体制を整えてくださっています」

トーマスまで。

胸が。

またいっぱいになる。

お父様を。

母の今の夫が。

守る。

普通なら。

あり得ない。

あり得ないはずなのに。

この人たちは。

いったい。

どれほど長い時間をかけて。

どんな関係を築いてきたのだろう。

私は。

本当に。

何も知らなかった。

「お母様……知ってるのよね」

「はい」

「お父様が行くことも?」

「もちろんでございます」

しばらく。

声が出なかった。

今日一日で。

何度。

自分の知っていた世界が覆されるのだろう。

父が病気だったこと。

その病気を二年間も隠していたこと。

成人式を境に始まった調査。

鷹宮家と会社の裏側。

最後まで明かされなかった切り札。

そして。

治療を受けるため。

お父様が向かう場所。

それが。

かつて最も強く愛した人。

――真悠子の元。