『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

「別の場所?」

「はい」

何となく。

嫌な予感ではない。

でも。

普通の転院の話ではない気がした。

「どこ?」

志水さんは。

すぐには答えなかった。

「今回の件は、旦那様ご自身の病状だけではなく、周囲に所在を知られないことが非常に重要になります」

確かに。

早紀子さんたちには。

今も。

お父様は長期出張中。

それで通している。

「そのため、国内で長期間入院されることは避ける予定です」

「じゃあ……」

「状態が整い次第、海外へ移っていただきます」

思わず目を見開いた。

「海外?」

「はい」

志水さんの声は。

静かだった。

「治療から療養まで、外部から所在を把握されない環境をすでに整えております」

所在を把握されない。

その言葉に。

改めて。

普通の療養ではないことが分かる。

病人一人を守るために。

そこまで。

「……要塞じゃない」

思わず漏れた。

志水さんが。

ほんのわずかに笑った。

「そのようなものかもしれません」

「誰がそこまで……」

言いかけて。

止まった。

お父様一人では。

できない。

海外。

厳重な警備。

医療体制。

そして。

このことを知っている人たち。

頭の中に。

一人の名前が浮かぶ。

でも。

まさか。

「志水さん」

自分でも。

少し声が震えた。

「その療養先って……」