『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

「……遼河さん」

ようやく。

声が出た。

「ああ」

でも。

そのあとが続かなかった。

何を聞けばいいのか。

何から話せばいいのか。

分からない。

「……ごめん。何でもない」

「そうか」

それだけ。

無理に聞いてこない。

そのことが。

今はありがたかった。

エレベーターへ乗る。

扉が閉じる。

鏡張りの壁に。

二人の姿が映った。

自分の顔を見て。

驚いた。

ひどい顔。

泣いているわけではない。

でも。

顔から感情が消えていた。

「……何だったんだろう」

気づけば。

呟いていた。

「私が今まで見てきたものって」

遼河さんは答えなかった。

すぐに答えられるようなことではないと。

きっと分かっていた。

「裏切られてたとか」

自分でも。

言葉を探しながら話す。

「騙されてたとか……そういう問題じゃないよね」

「ああ」

低い声。

「もっと根が深い」