『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

どれくらいの時間、病室にいたのだろう。

お父様の口から語られた話は、あまりにも多く、そして重かった。

六年近く前。

私がカリフォルニアへ送り出された、本当の理由。

成人式の日を境に、お父様が密かに調べ始めたこと。

早紀子さんの実家が関わる、鷹宮グループ内部の動き。

長い年月をかけて、知らないうちに張り巡らされていたもの。

表に見えていた家族の関係など、そのほんの一部分に過ぎなかったのだと、嫌というほど思い知らされた。

裏切られた。

騙されていた。

そんな単純な言葉だけでは、とても言い表せなかった。

そこにあったのは、もっと根深くて、もっと歪んだものだった。

人の欲。

執念。

見栄。

金。

地位。

そして、何年もの時間を費やしてでも目的を果たそうとする、理解しがたいほどの執着。

私が子どもの頃から見てきた鷹宮家という場所の裏側で、そんなものがずっと動き続けていた。

そしてお父様もまた。

成人式の日を境に本格的な調査へ動き出し、誰にも悟られないよう、長い時間をかけて証拠を集め続けていたのだという。

病気が分かってからも。

自分の身体が悪くなっていると知りながらも。

止めなかった。

そのことだけは、今でも納得できない。

納得なんて、できるはずがなかった。

けれど。

お父様が最後に、

『まだ、表には出していない最後の一手がある』

そう言った時。

私は思わず顔を上げた。

遼河さんも。

志水さんさえも。

一瞬、表情を変えた。

「何、それ……」

聞いても。

お父様は教えてくれなかった。

ただ、少し疲れたように笑って。

『最後の切り札だ』

そう言っただけだった。

「ここまで話しておいて、まだ隠すの?」

思わず責めるような声が出た。

けれど、お父様は首を横へ振った。

『今はまだ話せない』

また。

その言葉。

昔なら。

きっと腹が立っていた。

また私だけ。

また秘密。

そう思ったはずだった。

でも。

今日聞いたことの重さを考えると、何も言えなかった。

お父様が、ただ秘密にすることを楽しんでいるわけではない。

言えない理由がある。

今なら、それだけは分かる。

『半年後だ』

お父様は、もう一度そう言った。

『その時に、全部終わらせる』