その声だけは。
病人のものとは思えないほど強かった。
「半年後だ」
「半年後……?」
「そこを目標にしている。私の術後の回復もある。それまでに最後の確認を終え、必要なものをすべて揃える」
何を。
誰と。
何に決着をつけるの。
疑問ばかりが増えていく。
「今から、その内容をお前へ話す」
お父様は、まっすぐ私を見た。
「驚くと思う」
少しだけ。
悲しそうに笑う。
「いや。もしかしたら、私を許せなくなるかもしれない」
「……」
「それでも聞いてほしい」
私は。
黙って頷いた。
ここまで来て。
もう。
聞かないという選択肢はなかった。
「ただ、その前に一つ整理しておく」
お父様の視線が。
私から遼河さんへ移る。
「私の側から、正式に事情を共有している人間は限られている」
ゆっくりと名前を挙げる。
「志水。藤和君。トーマス。真悠子。そしてジュリアン」
真悠子。
胸が小さく跳ねた。
「……お母様も?」
「ああ」
また。
知らなかった。
けれど。
今度は口を挟まなかった。
「ただし、全員が同じ内容を知っているわけではない」
お父様が続ける。
「私と直接動き、調査資料と証拠を整理してきたのは志水。そして法的な面を含めて動いてくれているのがジュリアンだ」
そこで。
遼河さんを見る。
「藤和君にも長く協力してもらっているが、私が意図的に伏せていた部分がある。だから先ほど本人も言ったように、彼もすべてを知っているわけではない」
隣を見る。
遼河さんは何も言わなかった。
ただ。
その横顔は固かった。
「トーマスと真悠子には、お前を守るために必要なことと、海外側で協力してもらうために必要な範囲を伝えてある」
「……じゃあ、お母様は」
「病気のことも知っている」
胸が痛んだ。
「二年前から?」
「ああ」
目を閉じた。
本当に。
私は何も知らなかった。
でも。
さっきまでのような怒りとは。
少し違っていた。
ここまで徹底して隠したのなら。
きっと。
それだけの理由がある。
そう思い始めていた。
「それから」
お父様が続けた。
「藤和君のお父上にも、協力をお願いするうえで必要な範囲は伝えてある」
「隆史さんにも……?」
「ああ。ただし、詳細な証拠や調査の全容までは話していない。藤和グループとして動いてもらう時に必要な部分だけだ」
そこまで聞いて。
やっと分かった。
これは。
単なる家族の問題ではない。
お父様と早紀子さんの夫婦喧嘩でも。
蘭との確執だけでもない。
鷹宮グループ。
藤和グループ。
トーマス。
真悠子。
ジュリアン。
これだけの人間を巻き込んで。
何年もの間。
秘密裏に動かなければならなかったこと。
「お父様」
私は。
目の前のパソコンへ視線を落とした。
「……ここに、何が入ってるの?」
お父様は。
しばらく答えなかった。
やがて。
志水さんへ視線を向ける。
「開いてくれ」
「承知いたしました」
志水さんがパソコンを操作する。
画面が明るくなり。
いくつものフォルダが並んだ。
会社名。
日付。
口座。
契約書。
資金移動。
聞いたことのない企業名。
そして。
その中に。
見慣れた名字があった。
――早紀子さんの実家の名前。
背筋が冷たくなる。
お父様の声が。
静かに病室へ落ちた。
「ここから先は――」
私は顔を上げた。
「鷹宮家の中で、この十数年、何が起きていたのか。その話だ」
胸が。
大きく鳴った。
「そして」
お父様の目が。
真っ直ぐ私を捉える。
「お前が六年近く前、日本を離れなければならなかった、本当の理由でもある」
病人のものとは思えないほど強かった。
「半年後だ」
「半年後……?」
「そこを目標にしている。私の術後の回復もある。それまでに最後の確認を終え、必要なものをすべて揃える」
何を。
誰と。
何に決着をつけるの。
疑問ばかりが増えていく。
「今から、その内容をお前へ話す」
お父様は、まっすぐ私を見た。
「驚くと思う」
少しだけ。
悲しそうに笑う。
「いや。もしかしたら、私を許せなくなるかもしれない」
「……」
「それでも聞いてほしい」
私は。
黙って頷いた。
ここまで来て。
もう。
聞かないという選択肢はなかった。
「ただ、その前に一つ整理しておく」
お父様の視線が。
私から遼河さんへ移る。
「私の側から、正式に事情を共有している人間は限られている」
ゆっくりと名前を挙げる。
「志水。藤和君。トーマス。真悠子。そしてジュリアン」
真悠子。
胸が小さく跳ねた。
「……お母様も?」
「ああ」
また。
知らなかった。
けれど。
今度は口を挟まなかった。
「ただし、全員が同じ内容を知っているわけではない」
お父様が続ける。
「私と直接動き、調査資料と証拠を整理してきたのは志水。そして法的な面を含めて動いてくれているのがジュリアンだ」
そこで。
遼河さんを見る。
「藤和君にも長く協力してもらっているが、私が意図的に伏せていた部分がある。だから先ほど本人も言ったように、彼もすべてを知っているわけではない」
隣を見る。
遼河さんは何も言わなかった。
ただ。
その横顔は固かった。
「トーマスと真悠子には、お前を守るために必要なことと、海外側で協力してもらうために必要な範囲を伝えてある」
「……じゃあ、お母様は」
「病気のことも知っている」
胸が痛んだ。
「二年前から?」
「ああ」
目を閉じた。
本当に。
私は何も知らなかった。
でも。
さっきまでのような怒りとは。
少し違っていた。
ここまで徹底して隠したのなら。
きっと。
それだけの理由がある。
そう思い始めていた。
「それから」
お父様が続けた。
「藤和君のお父上にも、協力をお願いするうえで必要な範囲は伝えてある」
「隆史さんにも……?」
「ああ。ただし、詳細な証拠や調査の全容までは話していない。藤和グループとして動いてもらう時に必要な部分だけだ」
そこまで聞いて。
やっと分かった。
これは。
単なる家族の問題ではない。
お父様と早紀子さんの夫婦喧嘩でも。
蘭との確執だけでもない。
鷹宮グループ。
藤和グループ。
トーマス。
真悠子。
ジュリアン。
これだけの人間を巻き込んで。
何年もの間。
秘密裏に動かなければならなかったこと。
「お父様」
私は。
目の前のパソコンへ視線を落とした。
「……ここに、何が入ってるの?」
お父様は。
しばらく答えなかった。
やがて。
志水さんへ視線を向ける。
「開いてくれ」
「承知いたしました」
志水さんがパソコンを操作する。
画面が明るくなり。
いくつものフォルダが並んだ。
会社名。
日付。
口座。
契約書。
資金移動。
聞いたことのない企業名。
そして。
その中に。
見慣れた名字があった。
――早紀子さんの実家の名前。
背筋が冷たくなる。
お父様の声が。
静かに病室へ落ちた。
「ここから先は――」
私は顔を上げた。
「鷹宮家の中で、この十数年、何が起きていたのか。その話だ」
胸が。
大きく鳴った。
「そして」
お父様の目が。
真っ直ぐ私を捉える。
「お前が六年近く前、日本を離れなければならなかった、本当の理由でもある」
