『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

胸の奥が。

大きく揺れた。

「私が見ていなかったせいで、お前がどんな扱いを受けていたのか。あの日、初めて知った」

成人式の日。

破られた振袖。

笑っていた早紀子さん。

蘭。

そして。

床へ膝をつき。

破れた布を片づけようとしていた私。

お父様の顔が。

苦しそうに歪んだ。

「遅すぎた」

声が掠れる。

「あまりにも遅すぎた。父親でありながら、私は何も見ていなかった」

私は何も言えなかった。

「だからせめて、お前をあの家から出したあとだけでも、私がやらなければならなかった」

しばらく。

病室には誰も話す者がいなかった。

お父様を責めたい気持ちは消えていない。

今さら。

そんなことを言われても。

あの頃の私が救われるわけではない。

でも。

あの日。

お父様が何も感じていなかったわけではなかった。

そのことを知っただけで。

胸のどこかが。

痛いほど揺れた。

「そして、ようやく」

お父様がパソコンへ手を置いた。

「必要なものが揃い始めた」

「必要なもの……?」

「ああ」

目が鋭くなる。

「今回の入院を機に、私は根治治療に入る」

思わず顔を上げた。

「手術……するの?」

「ああ」

「本当に?」

「ああ。もう逃げない」

その言葉に。

ほんの少しだけ。

呼吸が楽になった気がした。

「医師とも話した。まず身体を立て直す。それから――」

お父様は一度、言葉を切った。

「決着をつける」