胸の奥が。
大きく揺れた。
「私が見ていなかったせいで、お前がどんな扱いを受けていたのか。あの日、初めて知った」
成人式の日。
破られた振袖。
笑っていた早紀子さん。
蘭。
そして。
床へ膝をつき。
破れた布を片づけようとしていた私。
お父様の顔が。
苦しそうに歪んだ。
「遅すぎた」
声が掠れる。
「あまりにも遅すぎた。父親でありながら、私は何も見ていなかった」
私は何も言えなかった。
「だからせめて、お前をあの家から出したあとだけでも、私がやらなければならなかった」
しばらく。
病室には誰も話す者がいなかった。
お父様を責めたい気持ちは消えていない。
今さら。
そんなことを言われても。
あの頃の私が救われるわけではない。
でも。
あの日。
お父様が何も感じていなかったわけではなかった。
そのことを知っただけで。
胸のどこかが。
痛いほど揺れた。
「そして、ようやく」
お父様がパソコンへ手を置いた。
「必要なものが揃い始めた」
「必要なもの……?」
「ああ」
目が鋭くなる。
「今回の入院を機に、私は根治治療に入る」
思わず顔を上げた。
「手術……するの?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ。もう逃げない」
その言葉に。
ほんの少しだけ。
呼吸が楽になった気がした。
「医師とも話した。まず身体を立て直す。それから――」
お父様は一度、言葉を切った。
「決着をつける」
大きく揺れた。
「私が見ていなかったせいで、お前がどんな扱いを受けていたのか。あの日、初めて知った」
成人式の日。
破られた振袖。
笑っていた早紀子さん。
蘭。
そして。
床へ膝をつき。
破れた布を片づけようとしていた私。
お父様の顔が。
苦しそうに歪んだ。
「遅すぎた」
声が掠れる。
「あまりにも遅すぎた。父親でありながら、私は何も見ていなかった」
私は何も言えなかった。
「だからせめて、お前をあの家から出したあとだけでも、私がやらなければならなかった」
しばらく。
病室には誰も話す者がいなかった。
お父様を責めたい気持ちは消えていない。
今さら。
そんなことを言われても。
あの頃の私が救われるわけではない。
でも。
あの日。
お父様が何も感じていなかったわけではなかった。
そのことを知っただけで。
胸のどこかが。
痛いほど揺れた。
「そして、ようやく」
お父様がパソコンへ手を置いた。
「必要なものが揃い始めた」
「必要なもの……?」
「ああ」
目が鋭くなる。
「今回の入院を機に、私は根治治療に入る」
思わず顔を上げた。
「手術……するの?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ。もう逃げない」
その言葉に。
ほんの少しだけ。
呼吸が楽になった気がした。
「医師とも話した。まず身体を立て直す。それから――」
お父様は一度、言葉を切った。
「決着をつける」
