息が止まった。
病室の空気が変わった気がした。
お父様の病気。
六年近く前。
私がカリフォルニアへ行かされたこと。
早紀子さんにも蘭にも、帰国を知らされなかったこと。
これまで別々に見えていたものが。
一本の線で繋がり始める。
「成人式を境に、私はそれまで見過ごしてきたものを洗い直した。本格的に調べ始めたのは、そこからだ」
お父様の声が低くなる。
「早紀子と、その実家。そして鷹宮グループ内部で起きていることを、表に出ない形で調べ始めた」
言葉が出なかった。
お父様はノートパソコンへ視線を落とした。
「本当なら、一年か二年で片をつけるつもりだった。だが、思っていた以上に根が深かった」
証拠として使えるものを揃えようとすれば。
別のものが出てくる。
一つを追えば。
さらにその奥へ繋がっていく。
「中途半端な状態で動けば、逆にこちらが潰されかねなかった」
「……何の話をしてるの?」
自分の声なのに。
ひどく遠く感じた。
お父様は、すぐには答えなかった。
「それを、これから全部話す」
パソコンの黒い画面に。
私たち三人の姿が薄く映っている。
「二年前に癌が見つかった時も、もちろん治療を勧められた。私だって死にたかったわけじゃない」
一度。
苦しそうに息を吐く。
「ただ、あと少しだと思ってしまったんだ」
胸が締めつけられた。
「あと少しで証拠が揃う。あと少しで、お前へ返すべきものを全部取り戻せる。そこまでやってから手術を受ければいいと……勝手にそう思った」
「そんな……」
言葉にならない。
何をしているの。
そう怒鳴りたい。
命より大事なものなんてないでしょう。
そう言いたい。
でも。
お父様の次の言葉が。
それを止めた。
「綾乃。私は、お前から奪われたものを、そのままにして死ぬわけにはいかなかった」
病室の空気が変わった気がした。
お父様の病気。
六年近く前。
私がカリフォルニアへ行かされたこと。
早紀子さんにも蘭にも、帰国を知らされなかったこと。
これまで別々に見えていたものが。
一本の線で繋がり始める。
「成人式を境に、私はそれまで見過ごしてきたものを洗い直した。本格的に調べ始めたのは、そこからだ」
お父様の声が低くなる。
「早紀子と、その実家。そして鷹宮グループ内部で起きていることを、表に出ない形で調べ始めた」
言葉が出なかった。
お父様はノートパソコンへ視線を落とした。
「本当なら、一年か二年で片をつけるつもりだった。だが、思っていた以上に根が深かった」
証拠として使えるものを揃えようとすれば。
別のものが出てくる。
一つを追えば。
さらにその奥へ繋がっていく。
「中途半端な状態で動けば、逆にこちらが潰されかねなかった」
「……何の話をしてるの?」
自分の声なのに。
ひどく遠く感じた。
お父様は、すぐには答えなかった。
「それを、これから全部話す」
パソコンの黒い画面に。
私たち三人の姿が薄く映っている。
「二年前に癌が見つかった時も、もちろん治療を勧められた。私だって死にたかったわけじゃない」
一度。
苦しそうに息を吐く。
「ただ、あと少しだと思ってしまったんだ」
胸が締めつけられた。
「あと少しで証拠が揃う。あと少しで、お前へ返すべきものを全部取り戻せる。そこまでやってから手術を受ければいいと……勝手にそう思った」
「そんな……」
言葉にならない。
何をしているの。
そう怒鳴りたい。
命より大事なものなんてないでしょう。
そう言いたい。
でも。
お父様の次の言葉が。
それを止めた。
「綾乃。私は、お前から奪われたものを、そのままにして死ぬわけにはいかなかった」
