『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

胸の奥を。

強く掴まれたような感覚がした。

ステージIII。

その意味を考えようとするのに。

頭が拒否する。

さっきまで。

意識は戻っている。

話もできる。

だから大丈夫だと。

どこかで思おうとしていた。

けれど。

そんな簡単な話ではなかった。

「……二年前?」

今度は、すぐに声が出た。

二年前。

私はまだカリフォルニアにいた。

何も知らずに。

大学を終え。

仕事をして。

真悠子たちと笑っていた頃。

その頃にはもう。

お父様は病気だった。

「診断された時から、医師には手術を含めた根治治療を勧められていた」

「だったら――」

思わず身を乗り出した。

「どうして、すぐ治療しなかったの?」

声が大きくなった。

止められなかった。

「二年前から分かってたんでしょう? それなのに、どうして――」

「治療を何も受けなかったわけではない」

お父様が静かに答えた。

「病状を抑えるための治療も、検査も続けていた。ただ……手術に踏み切れば、しばらく動けなくなる」

一度。

苦しそうに息を吐く。

「私は、それを先延ばしにした」

「そんな……」

「綾乃」

隣から、低い声がした。

振り向く。

遼河さんが私を見ていた。

「最後まで聞こう」

「でも……!」

「分かってる」

静かな声だった。

「言いたいことがあるのは分かる。俺もある」

一度、お父様へ視線を向ける。

「でも今は、宏輝さんに全部話してもらった方がいい」

唇を噛んだ。

納得できない。

でも。

ここで遮れば。

また肝心なところを聞けないままになる。

私はゆっくり椅子へ座り直した。

「……分かった」

お父様が目を伏せた。

「すまない」

「謝ってほしいんじゃない」

思わず返した。

「……そうだな」

寂しそうに笑う。

その顔を見たら。

それ以上、言えなくなった。

お父様は少し呼吸を整えてから。

再び話し始めた。

「もっと早くに、すべてを解決できる予定だったんだ」

「解決……?」

病気の話をしていたはずなのに。

突然出てきた言葉に、眉を寄せる。

「何を?」

「お前を日本から出した理由に関わることだ」