言葉を失った。
「……遼河さん?」
『はい』
どうして。
そこで。
遼河さんの名前が出るの。
胸の奥に。
また別のざわめきが広がった。
お父様。
志水さん。
遼河さん。
私の知らないところで。
三人の間には。
何があるの?
問いただしたかった。
でも。
今は。
それより先に。
「……分かった」
短く答えた。
「すぐ行く」
通話を切った。
携帯を握ったまま。
私はしばらく、その場から動けなかった。
お父様が倒れた。
病院にいる。
一年前には、もう病気だった。
それを。
私は知らなかった。
早紀子さんも。
蘭も。
知らない。
長期出張。
そんな嘘まで用意して。
すべてを隠している。
そして。
遼河さんは。
きっと。
何かを知っている。
「……何なのよ」
小さく漏れた声が。
思っていた以上に震えていた。
「どうして……また」
六年近く前。
突然。
カリフォルニアへ行けと言われた。
何も聞くな。
いずれ分かる。
我慢してくれ。
一年前。
日本へ戻った時も。
早紀子さんたちには知られていない。
今はまだ。
いずれ分かる。
ずっと。
ずっと。
そればかりだった。
「いずれって……いつなのよ」
声が掠れた。
「いつになったら……私にも話してくれるのよ」
「綾乃」
名前を呼ばれた。
顔を上げる。
廊下の先に。
遼河さんが立っていた。
いつからそこにいたのか分からない。
でも。
私の顔を見た瞬間。
彼の表情が変わった。
一年前なら。
こんな時でも。
何でもない顔をしようとしたかもしれない。
大丈夫です。
そう言って。
自分一人で何とかしようとしたと思う。
でも。
この一年で。
私は遼河さんが。
強引で。
しつこくて。
人の都合を無視するほど過保護で。
それでも。
本当に困った時には。
絶対に背中を向けない人なのだと知ってしまった。
だから。
その姿を見た途端。
張っていた糸が。
少しだけ緩んだ。
「どうした」
遼河さんが近づいてくる。
「顔色が悪い」
「……お父様が」
言葉にしようとして。
喉が詰まった。
口にしたら。
本当に。
何かが決定してしまいそうで。
怖かった。
「宏輝さんが?」
遼河さんの目が変わる。
「倒れたって」
やっと。
声になった。
「今、大学病院にいるって……意識は戻ってるみたいだけど」
言葉にした瞬間。
現実が。
一気に胸へ押し寄せた。
目の奥が熱くなる。
泣きたくない。
まだ。
何も決まったわけじゃない。
なのに。
声だけが。
どうしても震えた。
「病院は?」
聞かれ。
名前を告げる。
遼河さんは迷わなかった。
「行くぞ」
「……遼河さん?」
『はい』
どうして。
そこで。
遼河さんの名前が出るの。
胸の奥に。
また別のざわめきが広がった。
お父様。
志水さん。
遼河さん。
私の知らないところで。
三人の間には。
何があるの?
問いただしたかった。
でも。
今は。
それより先に。
「……分かった」
短く答えた。
「すぐ行く」
通話を切った。
携帯を握ったまま。
私はしばらく、その場から動けなかった。
お父様が倒れた。
病院にいる。
一年前には、もう病気だった。
それを。
私は知らなかった。
早紀子さんも。
蘭も。
知らない。
長期出張。
そんな嘘まで用意して。
すべてを隠している。
そして。
遼河さんは。
きっと。
何かを知っている。
「……何なのよ」
小さく漏れた声が。
思っていた以上に震えていた。
「どうして……また」
六年近く前。
突然。
カリフォルニアへ行けと言われた。
何も聞くな。
いずれ分かる。
我慢してくれ。
一年前。
日本へ戻った時も。
早紀子さんたちには知られていない。
今はまだ。
いずれ分かる。
ずっと。
ずっと。
そればかりだった。
「いずれって……いつなのよ」
声が掠れた。
「いつになったら……私にも話してくれるのよ」
「綾乃」
名前を呼ばれた。
顔を上げる。
廊下の先に。
遼河さんが立っていた。
いつからそこにいたのか分からない。
でも。
私の顔を見た瞬間。
彼の表情が変わった。
一年前なら。
こんな時でも。
何でもない顔をしようとしたかもしれない。
大丈夫です。
そう言って。
自分一人で何とかしようとしたと思う。
でも。
この一年で。
私は遼河さんが。
強引で。
しつこくて。
人の都合を無視するほど過保護で。
それでも。
本当に困った時には。
絶対に背中を向けない人なのだと知ってしまった。
だから。
その姿を見た途端。
張っていた糸が。
少しだけ緩んだ。
「どうした」
遼河さんが近づいてくる。
「顔色が悪い」
「……お父様が」
言葉にしようとして。
喉が詰まった。
口にしたら。
本当に。
何かが決定してしまいそうで。
怖かった。
「宏輝さんが?」
遼河さんの目が変わる。
「倒れたって」
やっと。
声になった。
「今、大学病院にいるって……意識は戻ってるみたいだけど」
言葉にした瞬間。
現実が。
一気に胸へ押し寄せた。
目の奥が熱くなる。
泣きたくない。
まだ。
何も決まったわけじゃない。
なのに。
声だけが。
どうしても震えた。
「病院は?」
聞かれ。
名前を告げる。
遼河さんは迷わなかった。
「行くぞ」
