『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

思わず足が止まった。

遼河さんは数歩進んでから、こちらを見る。

「行かないのか」

「あ、はい」

慌ててあとを追う。

胸の奥に。

何かが残った。

冷たい人。

厳しい人。

容赦のない人。

きっと。

それだけなら。

あれほど多くの人が、この人についてくるはずがない。

ジュリアンも。

笹倉さんも。

一ノ瀬さんも。

城之内さんも。

白鳥さんも。

真崎さんも。

それぞれの立場から。

長い時間、この人と一緒に会社を育ててきた。

その理由が。

少しだけ分かった気がした。

午前十一時。

欧州支社とのオンライン会議。

十二時。

予定どおり、遼河さんには三十分の昼食時間を確保した。

そして午後一時。

M&A案件の事前協議。

次から次へと予定が進んでいく。

忙しい。

でも。

面白い。

昨日より。

確実にそう思える。

M&A案件の資料へ目を通していた時だった。

「鷹宮さん」

笹倉さんから呼ばれる。

「はい」

「こちらの企業価値算定について、少し見てもらえますか」

渡された資料へ目を落とす。

買収候補企業の財務資料。

数年分の売上。

営業利益。

キャッシュフロー。

市場予測。

「この成長率ですが」

指を置く。

「はい」

「来年度以降が少し強気に設定されていますね」

「やはり、そう見えますか」

「既存事業だけなら、この伸びは難しいと思います。ただ、新製品の海外展開を含めた数字なら……」

ページをめくる。

「前提条件が資料内で統一されていません」

笹倉さんが身を乗り出す。

「どこです?」

「こちらでは海外展開開始が第二四半期。でも、この収益予測では第一四半期から売上が計上されています」

「……本当だ」