『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

無意識に。

声が出た。

遼河さんの手が止まった。

まずい。

「綾乃」

「……はい」

「聞こえているぞ」

「今のは聞こえない予定でした」

「十分聞こえた」

「忘れてください」

「無理だな」

遼河さんが椅子へ背を預ける。

「これは秘書業務の範囲を超えていると言いたいのか?」

「少しだけ」

「俺が必要だと判断した」

出た。

「……俺様理論」

「聞こえているぞ」

「今日はよく聞こえますね」

「お前の声が大きい」

「そんなことありません」

「ある」

睨む。

遼河さんは平然としている。

腹が立つ。

でも。

仕事そのものは。

思っていた以上に面白かった。

自分の経験が使える。

知らない分野も多い。

判断の速さを求められる。

一つの見落としが、大きな契約へ影響する。

そして。

遼河さんは。

幼馴染だからと私を甘やかすことはなかった。

必要な仕事を渡す。

答えを求める。

できれば認める。

できなければ、おそらく容赦なく指摘する。

それでいい。

その方がいい。

「何を笑っている」

言われて初めて。

自分の口元が緩んでいることに気づいた。

「笑ってません」

「笑っていた」

「気のせいです」

昨日。

遼河さんが使った言葉を、そのまま返す。

一瞬。

彼の目が細くなった。

「そうか」

「はい」

「なら、仕事を追加する」

「何でそうなるんですか!」