『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

即答だった。

不意打ち。

思わず言葉に詰まる。

こういうところ。

昔と違う。

もっと。

仕事では人を寄せつけない人になっているのだと思っていた。

でも。

きちんと見て。

必要なら、その場で認める。

「……ありがとうございます」

少し遅れて答えた。

その直後。

遼河さんが腕時計を見る。

「昼」

「え?」

「十二時半だ」

一気に現実へ引き戻された。

「あっ」

忘れてた。

いや。

仕事に集中していたのだから仕方ない。

急いで立ち上がる。

「手配してあります。会議終了に合わせて届くようお願いしています」

ちょうどその時。

内線が鳴った。

秘書課へ昼食が届いたらしい。

遼河さんが私を見る。

「準備がいいな」

「秘書ですから」

少し得意げに返す。

数分後。

デスクへ昼食を並べる。

消化が重くならない和食のお弁当。

汁物。

飲み物。

「十五分で食べられて、午後に眠くなりにくいものを選びました」

「分かった」

遼河さんが箸を取る。

私は自分の端末を持ち上げた。

「では、私は外で――」

「どこへ行く」

「昼食ですが」

「ここで食べろ」

「……はい?」

「お前の分もあるだろう」

もちろん。

自分用にも注文してある。

「秘書課でいただきます」

「ここでいい」

「なぜですか?」

「午後の予定を確認しながら食べる」

仕事と言われれば。

断りにくい。

「……分かりました」

仕方なく応接テーブルへ自分の分を置く。

向かいへ座る。

二人で食べ始める。

沈黙。

何これ。

昨日まで十三年間、ほとんど会っていなかった人と。

その翌日。

会社の執務室で向かい合ってお弁当を食べている。

人生の展開が早すぎる。

「綾乃」

「はい」

「午後の会議の資料――」

「食べながらですか?」

「ああ」

「休憩時間とは」

「話すだけだ」

「それを仕事と言うのでは?」

遼河さんの箸が止まる。

ほんのわずかに。

笑ったように見えた。

「嫌なら、食べ終わってからでいい」

「そうします」

「分かった」

……引いた。

意外。

もっと押してくると思った。

「何だ」

「いえ」

「何か言いたそうだな」

「別に」

視線を弁当へ戻した。

ほんの少しだけ。

昔の遼河さんを思い出した。