『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

資料を確認していく。

その途中。

私は一箇所で指を止めた。

「城之内課長」

「はい」

「十三時の打ち合わせですが、先方は丸の内ですよね」

「はい」

「終了予定が十四時十分。北米案件は十四時半から本社です」

城之内さんが画面を見る。

「……確かに」

「移動二十分では厳しいと思います。先方との打ち合わせが予定どおり終了するとも限りませんし」

遼河さんがこちらを見る。

「どうする」

いきなり振るの?

でも。

答えは決まっている。

「十三時の打ち合わせをオンラインへ変更できるなら、それが一番安全です。難しい場合は北米案件を十五時へずらします。ただ、参加者に海外拠点も含まれていますので、時差を考えれば、国内の先方へオンライン対応をお願いする方が現実的だと思います」

「理由は」

「CEOが遅れる可能性を残したまま海外拠点を待たせるより、国内取引先へ事情を説明して形式変更をお願いする方が調整しやすいからです」

数秒。

遼河さんが黙る。

「城之内」

「はい」

「十三時をオンラインへ変更できるか先方へ確認してくれ」

「承知しました」

城之内さんがすぐに連絡を取る。

遼河さんは、また私を見る。

「初日から遠慮がないな」

「無理な予定を無理だと申し上げるのも、秘書の仕事かと」

「その通りだ」

口元が、ほんの少しだけ緩んだ。

……褒められた?

少しだけ嬉しい。

でも。

顔には出さない。