入社手続きは順調に進んだ。
必要書類の確認。
社員証用の写真撮影。
緊急連絡先の登録。
就業規則や機密保持に関する説明。
その後、情報管理システム部へ移動し、真崎さんから業務用スマートフォンとノート端末を受け取った。
「鷹宮さんのアクセス権限は、通常のCEO秘書より広く設定されています」
真崎さんが淡々と告げる。
「通常より?」
「海外契約、M&A、役員会関連の共有領域まで閲覧可能です。ただし、最上位機密へのアクセスには藤和CEOかマクレガー副社長の承認が必要です」
「承知しました」
「生体認証を登録します」
指紋。
顔認証。
二段階認証。
次々と設定が進む。
最後に真崎さんが端末を私へ差し出した。
「分からないことがあれば連絡してください」
「ありがとうございます」
「二十四時間対応ではありません」
「……はい?」
「藤和CEOは時間を気にせず連絡してくるので、念のため」
真顔。
冗談なのか本気なのか分からない。
「真崎」
背後から低い声がした。
振り返る。
城之内さんだった。
「新人へ余計な先入観を与えないでください」
「事実です」
「事実でもです」
「なるほど」
真崎さんは納得したのかしていないのか分からない顔で、またタブレットへ視線を戻した。
……この会社。
昨日思ったより、面白い人が多いかもしれない。
「それでは鷹宮さん。CEOフロアへご案内します」
「よろしくお願いいたします」
城之内さんと並んで廊下を歩く。
途中。
彼が手元のタブレットを操作しながら口を開いた。
「今日から予定を前倒ししたと伺いました」
「私も昨日、初めて聞きました」
「やはり」
「やはり?」
城之内さんがわずかに苦笑した。
「藤和CEOは仕事に関しては非常に合理的な方ですが、時折、一度決めると周囲が止めても聞かないことがあります」
「それは存じています」
即答すると。
城之内さんが私を見た。
「……幼馴染でしたね」
「はい」
「では、私よりよくご存じかもしれません」
いえ。
昔より悪化しています。
もちろん、口には出さない。
CEOフロアは、それまでの執務フロアより静かだった。
秘書課のデスクエリア。
複数の応接室と会議室。
その一番奥に、CEO執務室がある。
城之内さんが扉をノックした。
「藤和CEO。鷹宮さんをお連れしました」
「入れ」
中へ入る。
広い。
けれど、昨日の会議室とは違い、驚くほど無駄がない。
大きなデスク。
壁一面のモニター。
応接セット。
窓の向こうには、東京の街並みが広がっている。
装飾らしいものは、ほとんどなかった。
机の上にも余計な物はない。
性格が出てる。
「座れ」
遼河さんが、デスク前の椅子を示した。
城之内さんも隣へ座る。
「まず、本日の予定をご説明します」
城之内さんから渡された端末には、朝から夜まで予定が隙なく並んでいた。
十時。
経営会議。
十一時三十分。
海外拠点とのオンラインミーティング。
十三時。
国内企業との打ち合わせ。
十四時三十分。
北米案件の事前協議。
十六時。
開発部門レビュー。
十八時。
取引先との会食。
「……詰まってますね」
思わず言う。
遼河さんがこちらを見る。
「普通だ」
「これが?」
「多い日はもっとある」
どういう生活してるの。
必要書類の確認。
社員証用の写真撮影。
緊急連絡先の登録。
就業規則や機密保持に関する説明。
その後、情報管理システム部へ移動し、真崎さんから業務用スマートフォンとノート端末を受け取った。
「鷹宮さんのアクセス権限は、通常のCEO秘書より広く設定されています」
真崎さんが淡々と告げる。
「通常より?」
「海外契約、M&A、役員会関連の共有領域まで閲覧可能です。ただし、最上位機密へのアクセスには藤和CEOかマクレガー副社長の承認が必要です」
「承知しました」
「生体認証を登録します」
指紋。
顔認証。
二段階認証。
次々と設定が進む。
最後に真崎さんが端末を私へ差し出した。
「分からないことがあれば連絡してください」
「ありがとうございます」
「二十四時間対応ではありません」
「……はい?」
「藤和CEOは時間を気にせず連絡してくるので、念のため」
真顔。
冗談なのか本気なのか分からない。
「真崎」
背後から低い声がした。
振り返る。
城之内さんだった。
「新人へ余計な先入観を与えないでください」
「事実です」
「事実でもです」
「なるほど」
真崎さんは納得したのかしていないのか分からない顔で、またタブレットへ視線を戻した。
……この会社。
昨日思ったより、面白い人が多いかもしれない。
「それでは鷹宮さん。CEOフロアへご案内します」
「よろしくお願いいたします」
城之内さんと並んで廊下を歩く。
途中。
彼が手元のタブレットを操作しながら口を開いた。
「今日から予定を前倒ししたと伺いました」
「私も昨日、初めて聞きました」
「やはり」
「やはり?」
城之内さんがわずかに苦笑した。
「藤和CEOは仕事に関しては非常に合理的な方ですが、時折、一度決めると周囲が止めても聞かないことがあります」
「それは存じています」
即答すると。
城之内さんが私を見た。
「……幼馴染でしたね」
「はい」
「では、私よりよくご存じかもしれません」
いえ。
昔より悪化しています。
もちろん、口には出さない。
CEOフロアは、それまでの執務フロアより静かだった。
秘書課のデスクエリア。
複数の応接室と会議室。
その一番奥に、CEO執務室がある。
城之内さんが扉をノックした。
「藤和CEO。鷹宮さんをお連れしました」
「入れ」
中へ入る。
広い。
けれど、昨日の会議室とは違い、驚くほど無駄がない。
大きなデスク。
壁一面のモニター。
応接セット。
窓の向こうには、東京の街並みが広がっている。
装飾らしいものは、ほとんどなかった。
机の上にも余計な物はない。
性格が出てる。
「座れ」
遼河さんが、デスク前の椅子を示した。
城之内さんも隣へ座る。
「まず、本日の予定をご説明します」
城之内さんから渡された端末には、朝から夜まで予定が隙なく並んでいた。
十時。
経営会議。
十一時三十分。
海外拠点とのオンラインミーティング。
十三時。
国内企業との打ち合わせ。
十四時三十分。
北米案件の事前協議。
十六時。
開発部門レビュー。
十八時。
取引先との会食。
「……詰まってますね」
思わず言う。
遼河さんがこちらを見る。
「普通だ」
「これが?」
「多い日はもっとある」
どういう生活してるの。
