あれだけ偉そうに。
明日八時半。
そう言っておきながら。
肝心なことが一つも分からない。
「詰めが甘すぎない?」
世界的企業のCEOが。
そんな初歩的なことを忘れる?
……いや。
待って。
仕事では完璧だと言われている人が?
まさか。
「狙ってる?」
私から連絡させるために。
さっき半ば強引に交換した、個人の連絡先。
自宅へ着いたら連絡しろ。
そのうえ今度は、明日の出勤方法まで確認しなければならない。
見事に。
連絡する理由が増えている。
「そこまでする? マジで面倒くさい」
本音が漏れた。
でも。
明日の朝、駐車場で立ち往生する方がもっと困る。
運転中の携帯には触れず、車載ディスプレイの音声操作を起動した。
「藤和遼河に電話」
『藤和遼河へ発信します』
車内に呼び出し音が流れる。
一度。
二度。
三度目が鳴る前に。
『どうした』
出た。
早っ。
まるで私が連絡してくるのを待っていたみたい。
「運転中ですので、ハンズフリーから失礼します」
『ああ』
「明日の出勤について確認があります」
『何だ』
「何だ、ではありません」
思わず声が低くなる。
「八時半に来いと仰いましたが、どこへ行けばいいんですか?」
一瞬。
電話の向こうが静かになった。
「社員証も入館証もありません。車をどこへ停めればいいのかも、どの入り口から入ればいいのかも聞いてません」
『そうだったな』
何、その反応。
本当に忘れていた人の声には聞こえない。
「もしかして、わざと説明しませんでした?」
『何のために』
「私から連絡させるためです」
『随分と自意識過剰だな』
「では、ただの説明不足ですか? 世界的企業のCEOともあろう方が?」
電話の向こうで。
わずかに息を漏らす音がした。
笑った。
絶対、笑った。
「今、笑いましたよね」
『笑っていない』
「嘘。聞こえました」
『運転に集中しろ』
話を逸らした。
やっぱり怪しい。
「それで、明日はどうすればいいんですか?」
『今日と同じ地下三階へ入れ。奥に社員用区画がある』
「でも、社員証がなければゲートを通れませんよね?」
『お前の車は、もう登録してある』
「……はい?」
今日。
初めて乗ったばかりの車なのに。
『ナンバーは宏輝さんから聞いた』
また、お父様。
私の知らないところで、どこまで話が進んでいるの。
「では、社員用の入り口から入れるんですか?」
『明日はまだ無理だ。地下三階へ着いたら俺に連絡しろ』
「城之内課長ではなく?」
『俺に』
「藤和CEO自ら迎えに来るんですか?」
『そうだ』
それは。
どう考えても目立つ。
「城之内課長にお願いした方が自然では?」
『城之内には別の仕事がある』
「では、ほかの秘書課の方に――」
『俺が行く』
取りつく島がない。
「……分かりました」
『八時二十分には着け』
明日八時半。
そう言っておきながら。
肝心なことが一つも分からない。
「詰めが甘すぎない?」
世界的企業のCEOが。
そんな初歩的なことを忘れる?
……いや。
待って。
仕事では完璧だと言われている人が?
まさか。
「狙ってる?」
私から連絡させるために。
さっき半ば強引に交換した、個人の連絡先。
自宅へ着いたら連絡しろ。
そのうえ今度は、明日の出勤方法まで確認しなければならない。
見事に。
連絡する理由が増えている。
「そこまでする? マジで面倒くさい」
本音が漏れた。
でも。
明日の朝、駐車場で立ち往生する方がもっと困る。
運転中の携帯には触れず、車載ディスプレイの音声操作を起動した。
「藤和遼河に電話」
『藤和遼河へ発信します』
車内に呼び出し音が流れる。
一度。
二度。
三度目が鳴る前に。
『どうした』
出た。
早っ。
まるで私が連絡してくるのを待っていたみたい。
「運転中ですので、ハンズフリーから失礼します」
『ああ』
「明日の出勤について確認があります」
『何だ』
「何だ、ではありません」
思わず声が低くなる。
「八時半に来いと仰いましたが、どこへ行けばいいんですか?」
一瞬。
電話の向こうが静かになった。
「社員証も入館証もありません。車をどこへ停めればいいのかも、どの入り口から入ればいいのかも聞いてません」
『そうだったな』
何、その反応。
本当に忘れていた人の声には聞こえない。
「もしかして、わざと説明しませんでした?」
『何のために』
「私から連絡させるためです」
『随分と自意識過剰だな』
「では、ただの説明不足ですか? 世界的企業のCEOともあろう方が?」
電話の向こうで。
わずかに息を漏らす音がした。
笑った。
絶対、笑った。
「今、笑いましたよね」
『笑っていない』
「嘘。聞こえました」
『運転に集中しろ』
話を逸らした。
やっぱり怪しい。
「それで、明日はどうすればいいんですか?」
『今日と同じ地下三階へ入れ。奥に社員用区画がある』
「でも、社員証がなければゲートを通れませんよね?」
『お前の車は、もう登録してある』
「……はい?」
今日。
初めて乗ったばかりの車なのに。
『ナンバーは宏輝さんから聞いた』
また、お父様。
私の知らないところで、どこまで話が進んでいるの。
「では、社員用の入り口から入れるんですか?」
『明日はまだ無理だ。地下三階へ着いたら俺に連絡しろ』
「城之内課長ではなく?」
『俺に』
「藤和CEO自ら迎えに来るんですか?」
『そうだ』
それは。
どう考えても目立つ。
「城之内課長にお願いした方が自然では?」
『城之内には別の仕事がある』
「では、ほかの秘書課の方に――」
『俺が行く』
取りつく島がない。
「……分かりました」
『八時二十分には着け』
