それから十三年。
会わなくなって。
連絡も途絶えて。
それでも。
忘れることだけは、できなかった人。
その人が今。
私の目の前にいる。
しかも――
KSサイエンスのCEOとして。
遼河さんの視線が、まっすぐ私を捉えた。
驚いている様子はなかった。
ほんの少し目を細める。
まるで。
私がここへ来ることを、ずっと前から知っていたように。
「久しぶりだな、綾乃」
昔と同じ呼び方。
それだけで、胸の奥にしまい込んでいたものが大きく揺れた。
「どうして……」
言葉が続かない。
どうして遼河さんが、ここにいるの。
藤和グループを継ぐ人だと思っていた。
それなのに。
なぜKSサイエンスのCEOなの。
そして。
なぜ私が。
明後日から、この人の秘書として働くことになっているの。
混乱したまま、ジュリアンを見る。
彼は。
驚きもしなければ、申し訳なさそうな顔もしない。
ただ。
面白そうに、私たちを見ていた。
その顔を見た瞬間。
分かった。
「……ジュリアン」
「何だい?」
「あなた、知ってたのね」
返事はない。
必要もなかった。
仕事を紹介したことも。
CEOについて、あえて詳しく教えなかったことも。
今日。
主要メンバーを全員この会議室へ集めたことも。
全部。
最初からだった。
「……騙したわね」
「人聞きが悪いな」
ジュリアンは悪びれずに肩をすくめた。
「私は、仕事を紹介しただけだよ」
「肝心なことを隠して」
「聞かれたことには答えたよ」
「CEOのことを聞いたでしょう!」
「だから言ったじゃないか。会えば分かる、と」
この人。
あとで絶対に覚えていて。
そう思ったところで。
再び、遼河さんと目が合った。
逃げようにも。
彼は扉の前にいる。
そして私は。
明後日から、この人のCEO付き秘書になる。
そこでようやく気づいた。
これは。
単なる就職のための顔合わせなんかじゃない。
十三年前。
自分の手で閉じ込めたはずの想いを。
もう一度、無理やり引きずり出すために仕組まれた――
再会という名の罠だった。
会わなくなって。
連絡も途絶えて。
それでも。
忘れることだけは、できなかった人。
その人が今。
私の目の前にいる。
しかも――
KSサイエンスのCEOとして。
遼河さんの視線が、まっすぐ私を捉えた。
驚いている様子はなかった。
ほんの少し目を細める。
まるで。
私がここへ来ることを、ずっと前から知っていたように。
「久しぶりだな、綾乃」
昔と同じ呼び方。
それだけで、胸の奥にしまい込んでいたものが大きく揺れた。
「どうして……」
言葉が続かない。
どうして遼河さんが、ここにいるの。
藤和グループを継ぐ人だと思っていた。
それなのに。
なぜKSサイエンスのCEOなの。
そして。
なぜ私が。
明後日から、この人の秘書として働くことになっているの。
混乱したまま、ジュリアンを見る。
彼は。
驚きもしなければ、申し訳なさそうな顔もしない。
ただ。
面白そうに、私たちを見ていた。
その顔を見た瞬間。
分かった。
「……ジュリアン」
「何だい?」
「あなた、知ってたのね」
返事はない。
必要もなかった。
仕事を紹介したことも。
CEOについて、あえて詳しく教えなかったことも。
今日。
主要メンバーを全員この会議室へ集めたことも。
全部。
最初からだった。
「……騙したわね」
「人聞きが悪いな」
ジュリアンは悪びれずに肩をすくめた。
「私は、仕事を紹介しただけだよ」
「肝心なことを隠して」
「聞かれたことには答えたよ」
「CEOのことを聞いたでしょう!」
「だから言ったじゃないか。会えば分かる、と」
この人。
あとで絶対に覚えていて。
そう思ったところで。
再び、遼河さんと目が合った。
逃げようにも。
彼は扉の前にいる。
そして私は。
明後日から、この人のCEO付き秘書になる。
そこでようやく気づいた。
これは。
単なる就職のための顔合わせなんかじゃない。
十三年前。
自分の手で閉じ込めたはずの想いを。
もう一度、無理やり引きずり出すために仕組まれた――
再会という名の罠だった。
