『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

それから十三年。

会わなくなって。

連絡も途絶えて。

それでも。

忘れることだけは、できなかった人。

その人が今。

私の目の前にいる。

しかも――

KSサイエンスのCEOとして。

遼河さんの視線が、まっすぐ私を捉えた。

驚いている様子はなかった。

ほんの少し目を細める。

まるで。

私がここへ来ることを、ずっと前から知っていたように。

「久しぶりだな、綾乃」

昔と同じ呼び方。

それだけで、胸の奥にしまい込んでいたものが大きく揺れた。

「どうして……」

言葉が続かない。

どうして遼河さんが、ここにいるの。

藤和グループを継ぐ人だと思っていた。

それなのに。

なぜKSサイエンスのCEOなの。

そして。

なぜ私が。

明後日から、この人の秘書として働くことになっているの。

混乱したまま、ジュリアンを見る。

彼は。

驚きもしなければ、申し訳なさそうな顔もしない。

ただ。

面白そうに、私たちを見ていた。

その顔を見た瞬間。

分かった。

「……ジュリアン」

「何だい?」

「あなた、知ってたのね」

返事はない。

必要もなかった。

仕事を紹介したことも。

CEOについて、あえて詳しく教えなかったことも。

今日。

主要メンバーを全員この会議室へ集めたことも。

全部。

最初からだった。

「……騙したわね」

「人聞きが悪いな」

ジュリアンは悪びれずに肩をすくめた。

「私は、仕事を紹介しただけだよ」

「肝心なことを隠して」

「聞かれたことには答えたよ」

「CEOのことを聞いたでしょう!」

「だから言ったじゃないか。会えば分かる、と」

この人。

あとで絶対に覚えていて。

そう思ったところで。

再び、遼河さんと目が合った。

逃げようにも。

彼は扉の前にいる。

そして私は。

明後日から、この人のCEO付き秘書になる。

そこでようやく気づいた。

これは。

単なる就職のための顔合わせなんかじゃない。

十三年前。

自分の手で閉じ込めたはずの想いを。

もう一度、無理やり引きずり出すために仕組まれた――

再会という名の罠だった。