『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

「改めまして、明後日からよろしくお願いいたします」

私が頭を下げると、ジュリアンが満足そうに頷いた。

「これで主要メンバーは、ほぼ紹介できた」

「ほぼ?」

「ああ」

ジュリアンが腕時計を見る。

「あと一人」

城之内さんも時刻を確認した。

「CEOは先ほどまで別件の会議へ出席されていました。間もなくお見えになるはずです」

私は小さく頷いた。

もちろん。

顔合わせが決まってから、KSサイエンスについて調べられることは一通り調べた。

けれど、この会社は少し変わっていた。

会社や技術に関する情報はいくらでも出てくるのに、CEO本人に関する情報だけが妙に少ない。

メディアへの個人露出をほとんど避け、対外向けの資料でもCEOについてはイニシャル表記が中心。

顔写真も、詳しい経歴も公表されていなかった。

ジュリアンから渡された採用関係の資料にも、業務内容や待遇、秘書として求められる役割は細かく記されていたのに。

なぜか、CEO個人についての情報だけは徹底して省かれていた。

一度、ジュリアンに尋ねたこともある。

けれど。

『会えば分かるよ』

笑って、それだけ。

今思えば。

あの時点で、もっと疑うべきだったのかもしれない。

どんな人なのだろう。

ジュリアンと長年会社を経営しているくらいだから、相当癖が強い可能性もある。

――ジュリアンの仲間だもの。

少しだけ警戒しておいた方がいいかもしれない。

そんなことを考えた、その時。

会議室の扉が開いた。