『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

私は二人を見送りながら、ふと庭へ目を向けた。

春風に揺れる桜の向こうに、もう梨杏の姿はない。

家の中では四歳の三つ子が笑い、喧嘩をし、一歳の玲音は今日も元気に家中を歩き回っている。厨房では佐知子さんが忙しそうに動き、家の中には絶えず誰かの声が響いていた。

家族が増えれば、当然、騒がしさも増える。

部屋も、洗濯物も、食事も、喧嘩も、泣き声も、笑い声も、何もかもが想像していた以上で、一日が終わる頃には何をしていたのか思い出せないくらい疲れていることだってある。

それでも、昔の私がこの光景を見たら、きっと信じないだろう。

こんなにたくさんの「行ってきます」があって、同じだけの「おかえり」と「ただいま」がある家で、自分が暮らしているなんて。

「ママー!」

再び三つ子の声が響いた。

「はーい!」

「レオンがー!」

「何したの!?」

返事をしながら、私は慌ててリビングへ戻る。

静かな朝は、今日も三分ともたなかった。

でも、それでいい。

お姉ちゃんは今日も元気にランドセルを背負って学校へ行き、妹たちは今日も元気に喧嘩をして、末っ子は今日も元気に何かをやらかす。

パパは相変わらず過保護で、ジィジは今日も喜んで孫の専属運転手をしている。

そして私は、今日もこの騒がしすぎる家族の真ん中で笑っている。

春。

桜舞う朝。

藤和家は――今日も、絶好調だった。

――完――