父と志水さんを見送ったあとも、私はしばらく玄関の前に立っていた。
扉が閉まっただけなのに。
部屋の中から、一気に音が消えたように感じる。
今日聞いたことを、まだ全部整理できていない。
父が帰ってきた。
慎ちゃんが六年半前から、事件の一端を知っていた。
しかも。
自分の力で。
ずっと語学留学だと思っていたその裏で。
慎ちゃんもまた、守られていた。
そして今は。
お母さんのところにいる。
会いたい。
顔を見て。
どうして黙ってたの、と文句を言いたい。
でも。
それは全部終わってからだ。
「綾乃お嬢様」
振り返ると、佐知子さんが時計へ目をやった。
「では、私も今日はこれで失礼いたしますね」
「あ……もうこんな時間」
「旦那様がお戻りになる日ですもの。今日くらいは構いませんよ」
「ごめんね。遅くまで」
「謝らなくて結構です」
そう言って微笑んだあと。
佐知子さんの視線が、ほんの一瞬だけ私のお腹へ落ちた。
見逃さなかった。
「……何?」
「何も」
「絶対、何か言いたい顔してる」
「うふふ」
「ほら」
佐知子さんは楽しそうに笑ったあと。
少しだけ声を柔らかくした。
「無理はなさらないでくださいね」
「分かってる」
「それと」
「何?」
「藤和様には、きちんとお話しするんですよ」
「……分かってます」
佐知子さんは満足そうに頷いた。
「では、お先に失礼いたします」
「今日はありがとう」
「どういたしまして」
玄関まで見送り。
扉を閉める。
今度こそ。
部屋に本当の静けさが戻った。
扉が閉まっただけなのに。
部屋の中から、一気に音が消えたように感じる。
今日聞いたことを、まだ全部整理できていない。
父が帰ってきた。
慎ちゃんが六年半前から、事件の一端を知っていた。
しかも。
自分の力で。
ずっと語学留学だと思っていたその裏で。
慎ちゃんもまた、守られていた。
そして今は。
お母さんのところにいる。
会いたい。
顔を見て。
どうして黙ってたの、と文句を言いたい。
でも。
それは全部終わってからだ。
「綾乃お嬢様」
振り返ると、佐知子さんが時計へ目をやった。
「では、私も今日はこれで失礼いたしますね」
「あ……もうこんな時間」
「旦那様がお戻りになる日ですもの。今日くらいは構いませんよ」
「ごめんね。遅くまで」
「謝らなくて結構です」
そう言って微笑んだあと。
佐知子さんの視線が、ほんの一瞬だけ私のお腹へ落ちた。
見逃さなかった。
「……何?」
「何も」
「絶対、何か言いたい顔してる」
「うふふ」
「ほら」
佐知子さんは楽しそうに笑ったあと。
少しだけ声を柔らかくした。
「無理はなさらないでくださいね」
「分かってる」
「それと」
「何?」
「藤和様には、きちんとお話しするんですよ」
「……分かってます」
佐知子さんは満足そうに頷いた。
「では、お先に失礼いたします」
「今日はありがとう」
「どういたしまして」
玄関まで見送り。
扉を閉める。
今度こそ。
部屋に本当の静けさが戻った。

