『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

怖い。

でも。

その怖さの奥に。

別の何かがあった。

小さく。

まだ名前を付けることもできない。

期待に似たもの。

私は慌ててスマートフォンを伏せた。

「違うかもしれない」

誰に聞かせるわけでもなく。

小さく呟いた。

疲れているだけ。

環境が変わったせい。

周期がずれることだってある。

理由なんて。

いくらでもある。

それなのに。

その日の午後。

私は何度も。

無意識に。

自分のお腹へ手をやっていた。



帰り。

遼河さんには何も言わなかった。

一人でドラッグストアへ寄った。

店内を歩くだけなのに。

妙に周囲が気になる。

誰も私のことなど見ていない。

分かっているのに。

目的の棚へ近づくほど。

心臓が速くなった。

一つ手に取る。

説明を見る。

また戻す。

違うものを取る。

そんなことを何度か繰り返して。

結局。

最初に手へ取ったものを買った。

レジ袋を受け取った時。

急に。

現実味が増した。

家へ帰るまで。

バッグの中にある小さな箱が。

ずっと。

大きな存在感を持っていた。

帰宅して。

着替えて。

手を洗って。

それでも。

すぐには使えなかった。

洗面台の前へ置いた箱を。

何度も見た。

「……違うかもしれない」

もう一度。

声にしてみる。

ただの疲れ。

ただの遅れ。

そんなことは珍しくない。

結果が違えば。

笑えばいい。

考えすぎだった。

そう言って。

明日からまた。

いつもの生活へ戻ればいい。

でも。

確認しなければ。

何も分からない。

私は。

ゆっくり。

箱を開けた。

説明書を読む。

一度読んで。

もう一度読む。

頭へ入ってこない。

「落ち着いて……」

自分へ言い聞かせた。

それから。

書かれている通りにして。

待った。

たった数分。

普段なら。

何でもない時間。

でも。

その数分が。

信じられないほど長かった。

洗面台へ置いたまま。

まともに見られず。

一度。

部屋を出た。

戻る。

また出る。

「……まだ?」

時計を見る。

もう。

確認する時間は過ぎていた。

逃げても。

結果は変わらない。

私は。

ゆっくり。

それを手へ取った。

そして。

固まった。

「……」

二本。

はっきり。

見間違えようのない。

二本。