『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』



その日は。

不思議な一日だった。

十三年分の話をした。

話しても。

話しても。

まだ足りなかった。

私が知らなかった遼河さんの十三年。

遼河さんが知らなかった私の十三年。

どちらか一人だけが止まっていたわけではない。

お互い。

それぞれの場所で生きてきた。

それでも。

心のどこかに。

ずっと同じ人がいた。

夜になっても。

私たちは一緒にいた。

もう。

昨日のように。

お酒に酔っているわけでもない。

誰かから逃げているわけでもない。

ただ。

好きな人のそばにいたかった。

そして。

その夜。

私たちは初めて結ばれた。

遼河さんは。

何度も私へ確認した。

「本当にいいのか」

最初は。

少し笑ってしまった。

「さっきから何回目?」

「何度でも聞く」

「私は大丈夫です」

「後悔しないか」

その言葉に。

私は少しだけ黙った。

後悔。

十三年間。

後悔なら。

もう充分すぎるほどした。

言えなかったこと。

聞かなかったこと。

逃げたこと。

全部。

だから。

今度は。

自分で選びたかった。

「しません」

遼河さんを見た。

「私が決めたから」

その言葉を聞いて。

ようやく。

遼河さんの表情が少し緩んだ。

誰かに仕組まれた夜の続きではない。

お酒のせいでもない。

昔の気持ちに流されたわけでもない。

朝になって。

全部を知って。

互いの気持ちを言葉にして。

それでも。

私が。

今の遼河さんを選んだ。

長い間。

届かなかった距離が。

ようやく。

本当になくなった。



翌朝。

薄い光の中で目を覚ました。

まだぼんやりしたまま、少し身体を動かす。

隣から。

人の気配がした。

「……」

ゆっくり横を見る。

遼河さんがいた。

そこで。

昨日の夜が。

一瞬にして全部蘇った。

「……っ!」

反射的に布団を頭まで被った。

「何してる」

すぐ隣から声がする。

もう起きていたらしい。

「見ないで」

「今さら?」

「今さらでもです」

「昨日は散々見た」

「言わないで!」

思わず布団の中から叫ぶ。

低い笑い声が聞こえた。

「朝から最低」

「事実だろ」

「そういう問題じゃない」

恥ずかしい。

本当に。

穴があったら入りたい。

それなのに。

布団の中で。

口元が緩んでいる自分にも気づいていた。

嬉しい。

悔しいくらい。

嬉しい。

しばらくすると。

布団の上から。

ぽん、と。

頭を撫でられた。

「綾乃」

「……何ですか」

さっきまでとは違う。

少し真面目な声だった。

「俺は責任を取る」