*
その日は。
不思議な一日だった。
十三年分の話をした。
話しても。
話しても。
まだ足りなかった。
私が知らなかった遼河さんの十三年。
遼河さんが知らなかった私の十三年。
どちらか一人だけが止まっていたわけではない。
お互い。
それぞれの場所で生きてきた。
それでも。
心のどこかに。
ずっと同じ人がいた。
夜になっても。
私たちは一緒にいた。
もう。
昨日のように。
お酒に酔っているわけでもない。
誰かから逃げているわけでもない。
ただ。
好きな人のそばにいたかった。
そして。
その夜。
私たちは初めて結ばれた。
遼河さんは。
何度も私へ確認した。
「本当にいいのか」
最初は。
少し笑ってしまった。
「さっきから何回目?」
「何度でも聞く」
「私は大丈夫です」
「後悔しないか」
その言葉に。
私は少しだけ黙った。
後悔。
十三年間。
後悔なら。
もう充分すぎるほどした。
言えなかったこと。
聞かなかったこと。
逃げたこと。
全部。
だから。
今度は。
自分で選びたかった。
「しません」
遼河さんを見た。
「私が決めたから」
その言葉を聞いて。
ようやく。
遼河さんの表情が少し緩んだ。
誰かに仕組まれた夜の続きではない。
お酒のせいでもない。
昔の気持ちに流されたわけでもない。
朝になって。
全部を知って。
互いの気持ちを言葉にして。
それでも。
私が。
今の遼河さんを選んだ。
長い間。
届かなかった距離が。
ようやく。
本当になくなった。
*
翌朝。
薄い光の中で目を覚ました。
まだぼんやりしたまま、少し身体を動かす。
隣から。
人の気配がした。
「……」
ゆっくり横を見る。
遼河さんがいた。
そこで。
昨日の夜が。
一瞬にして全部蘇った。
「……っ!」
反射的に布団を頭まで被った。
「何してる」
すぐ隣から声がする。
もう起きていたらしい。
「見ないで」
「今さら?」
「今さらでもです」
「昨日は散々見た」
「言わないで!」
思わず布団の中から叫ぶ。
低い笑い声が聞こえた。
「朝から最低」
「事実だろ」
「そういう問題じゃない」
恥ずかしい。
本当に。
穴があったら入りたい。
それなのに。
布団の中で。
口元が緩んでいる自分にも気づいていた。
嬉しい。
悔しいくらい。
嬉しい。
しばらくすると。
布団の上から。
ぽん、と。
頭を撫でられた。
「綾乃」
「……何ですか」
さっきまでとは違う。
少し真面目な声だった。
「俺は責任を取る」
その日は。
不思議な一日だった。
十三年分の話をした。
話しても。
話しても。
まだ足りなかった。
私が知らなかった遼河さんの十三年。
遼河さんが知らなかった私の十三年。
どちらか一人だけが止まっていたわけではない。
お互い。
それぞれの場所で生きてきた。
それでも。
心のどこかに。
ずっと同じ人がいた。
夜になっても。
私たちは一緒にいた。
もう。
昨日のように。
お酒に酔っているわけでもない。
誰かから逃げているわけでもない。
ただ。
好きな人のそばにいたかった。
そして。
その夜。
私たちは初めて結ばれた。
遼河さんは。
何度も私へ確認した。
「本当にいいのか」
最初は。
少し笑ってしまった。
「さっきから何回目?」
「何度でも聞く」
「私は大丈夫です」
「後悔しないか」
その言葉に。
私は少しだけ黙った。
後悔。
十三年間。
後悔なら。
もう充分すぎるほどした。
言えなかったこと。
聞かなかったこと。
逃げたこと。
全部。
だから。
今度は。
自分で選びたかった。
「しません」
遼河さんを見た。
「私が決めたから」
その言葉を聞いて。
ようやく。
遼河さんの表情が少し緩んだ。
誰かに仕組まれた夜の続きではない。
お酒のせいでもない。
昔の気持ちに流されたわけでもない。
朝になって。
全部を知って。
互いの気持ちを言葉にして。
それでも。
私が。
今の遼河さんを選んだ。
長い間。
届かなかった距離が。
ようやく。
本当になくなった。
*
翌朝。
薄い光の中で目を覚ました。
まだぼんやりしたまま、少し身体を動かす。
隣から。
人の気配がした。
「……」
ゆっくり横を見る。
遼河さんがいた。
そこで。
昨日の夜が。
一瞬にして全部蘇った。
「……っ!」
反射的に布団を頭まで被った。
「何してる」
すぐ隣から声がする。
もう起きていたらしい。
「見ないで」
「今さら?」
「今さらでもです」
「昨日は散々見た」
「言わないで!」
思わず布団の中から叫ぶ。
低い笑い声が聞こえた。
「朝から最低」
「事実だろ」
「そういう問題じゃない」
恥ずかしい。
本当に。
穴があったら入りたい。
それなのに。
布団の中で。
口元が緩んでいる自分にも気づいていた。
嬉しい。
悔しいくらい。
嬉しい。
しばらくすると。
布団の上から。
ぽん、と。
頭を撫でられた。
「綾乃」
「……何ですか」
さっきまでとは違う。
少し真面目な声だった。
「俺は責任を取る」

