『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』

一瞬。

意味が分からなかった。

聞こえたはずなのに。

頭が追いつかなかった。

「……え?」

「ずっと、お前は特別だった」

「……いつから?」

その問いに。

遼河さんは少しだけ考えた。

「いつからが恋だったのかは、正直、自分でも分からない」

「……分からないの?」

「ああ」

遼河さんが、遠い昔を思い出すように目を細めた。

「十六の俺が、十歳のお前を恋愛対象として見ていたわけじゃない。あの頃はただ、放っておけなかった」

来ているはずなのに姿が見えなければ探した。

何をしているのか気になった。

泣いていれば気になって。

笑っていれば、なぜか安心した。

「最初は、それだけだった」

「……うん」

「ただ」

遼河さんの目が、私へ戻る。

「お前が俺を避けるようになって。それでも気になって。会えなくなっても忘れなくて」

一度。

言葉を切る。

「本当にいなくなった時に、やっと嫌でも分かった」

胸が鳴った。

「……何が?」

「ただの幼馴染に向ける気持ちじゃなかったってことだ」

私は言葉を失った。

「だから」

少しだけ。

遼河さんが困ったように笑う。

「昔から大事だった。それが恋だと自覚したのは、もっと後だ」

その言葉が。

不思議なくらい。

胸へすっと入ってきた。

十三歳の私が。

もし。

今の言葉を聞いていたら。

どうしていただろう。

あんなに泣かなくて済んだだろうか。

違う人生になっていただろうか。

そんな考えが、一瞬だけ頭を過った。

けれど。

もう。

過去に戻りたいわけではなかった。

「成人式のあと、お前がいなくなると聞いた。海外へ行ったことまでは分かった」

「……うん」

「でも、詳しい居場所は教えてもらえなかった」

「お父様が隠したから」

「ああ」

遼河さんの目が、わずかに揺れた。

「それでも探した」

「……え?」

「そのままの意味だ」

「何年も?」

「ああ」

「ずっと?」

「ずっと」

信じられなかった。

私だけだと思っていた。

私だけが。

忘れられなくて。

諦めきれなくて。

何年も引きずっていたのだと思っていた。

「何で……」

声が震えた。

遼河さんは。

まるで答えなど一つしかないという顔で言った。

「好きだったからに決まってるだろ」

涙が。

また溢れた。

今度は。

止めようとも思わなかった。

「……遅い」

「何が」

「それ……もっと早く言ってよ」

「お前がいなかった」

「そうだけど……」

「再会してからも、お前は蘭さんのことばかり気にして、俺の話をまともに聞かなかった」

「……それは……」

「だから今言ってる」

遼河さんの目が。

真っ直ぐ私を捉える。

「俺が探してたのは、お前だ」