踊り子は、芸能界で愛されすぎています。


―― パっ 。


暗かった舞台に、ひと筋の光が落ちた。

スポットライトに照らされたのは、桃色の着物に身を包んだ踊り子。

その姿が浮かびあった瞬間 ―――




「 わああああっ! 」

客席から大きな歓声が上がる。

続いて舞台袖から次々と踊り子たちが現れる。

太鼓が鳴る。 鉦が響く。





そして私は、隣にいる幼なじみと一瞬だけ目を合わせた。

言葉はいらない。

次の動きはもう分かってる。

「いくよ」

隣の幼なじみと息を合わせて、私たちは同時に踏み出した。




桃葉(ももは)連 。

高円寺の夏を彩る、私たちの大切な場所。




「桃葉連、ありがとうございました!」

舞台の上で踊り終えると、大きな拍手が降り注いだ。


けれど、私たちの夏はまだ終わらない。



舞台を降りた私たちは、そのまま街へと向かう。

目の前には、踊りを待つ人々で埋め尽くされた道。

もう一度、太鼓が鳴った。

私たちは笑って、歩道沿いの演舞場へ飛び込んだ。



ここからが、高円寺阿波踊りの本番だ。