どうやら、先程感じた違和感は小林君から佐竹君にすり替わっていたことが原因だったようだ。
佐竹 光秀。
前方が見えているのか疑問に思うほど長い前髪が特徴的な男子。
幽霊のような彼の外見は同学年の中では有名で。
のれんのような前髪は、もはや佐竹君を象徴するものとなっている。
それに…
「こわっ…」
席の隣に立っていた七恵が、佐竹君をガン見しながら小声で呟いた。
そう。
残念ながら佐竹は不人気。
特に女子に。
理由は見た目が暗いから。
そんな安易な理由。
正直、佐竹君の事は外見からして少し苦手だなと思うところはある。
どんな人物なのかわからないし、だからと言って知りたいとも思わない。
スッと席を立つと、七恵をその場から少し離して小声で言う。
「なんで席変わったこと教えてくれなかったの?」
「だって…教えたら梅が学校来なくなると思って」
「そんなことはないけど…」
チラリと佐竹君のほうに目をやる。
…あんなに前髪伸ばして前方見えてるのかな?
小林君より佐竹君の方が黒板見えなくない?
思わず観察してしまう。
「ねぇ、見て。さっきから佐竹君、黙々とノートに何か書いてるんだけど。怪しいって…」
「あれ学級日誌」
外見のせいで佐竹君の行動全てを怪しく感じてしまう。
佐竹君を見る七恵の冷たい視線に、さすがに可哀想だと思ってしまった。
前髪切ればいいのに。
そうすれば少しは周囲の反応も変わるかもしれないのに。
まぁ、髪型なんて本人の自由だし、なんでもいいけど。
…これから佐竹君と大きく関わっていく事になるなんてこの時の私は思ってもいなかった。
