隣の席の佐竹くんには…


何年かぶりに熱を出してしまった私は、結局、二日間学校を休んだ。

念願が叶ったかと思えば、風邪引くし…
ここぞというとき、運は私の味方になってくれないことが多い気がする…

…いや、最高の席を確保できたんだから、きっと平凡な日々を送ることができるはずだよね。

「梅おはよー!体調大丈夫?」

教室へ入るなり、心配した顔して七恵が駆け寄ってきた。

「とりあえず熱は下がったけど体にダルさがまだ残ってるかなって感じ」

「そっか。無理はしないでね。ヤバい時は言ってね」

「ありがとう」

優しい言葉が胸に染みかけたが、

「梅って常に冷め切った顔してるからダルさが伝わってこないからさぁ」

七恵は”サマーバーゲン”と書かれた団扇をパタパタと仰ぐ。

七恵のほうがダルそうだけど。

いつもの調子の七恵に息をついて、新しい自分の席へと向かう。と…

…ん?

席に座るなり眉をひそめ首を傾げた。

なんだろう…?

何故だか違和感を感じる。

学校を休んでたせい?
病み上がりだから?

…いやいや、違う。
そうじゃない…

原因がわからず、しっくりこない様子で辺りを見回していると、左隣に座っている男子に目が止まった。

一度視線をずらし、もう一度隣へ視線をずらす。
もう一度同じ動作を繰り返す。

三度見。


私の視線に気づいた隣の男子は、ノートに向かってペンを走らせていた手を止めると、こちらに顔を向けてきた。

「梅沢さんおはよう」

「…は?」

すぐに状況が掴めなくて、思わず冷たい反応をしてしまった。

しかし、そんなそっけない態度を気にする事なく男子は話しかけてくる。

「今日、オレたち日直だよ」

「にっちょ……えっ?」

「梅沢さん病み上がりで辛いだろうから、オレ全部やるね」

「にっちょ……じゃなくて」

「んっ?」

不思議そうに小首を傾げた男子に、混乱気味の脳内を落ち着かせるように一拍あけてから言う。

「そこ、小林君の席だよ?なんで佐竹君が座ってるの?」

「梅沢さんが休んでる間、小林が黒板の文字がよく見えなくて授業に集中できないって困ってたからオレが代わってあげたんだ」

「そうなんだ…へぇ…」


薄い返事をし、スイッと佐竹君からから視線を外した。