隣の席の佐竹くんには…

「佐竹は剣道部所属」

「へぇ」

"佐竹情報"って要は佐竹君の基本的なプロフィールだよね。

佐竹君の事を知れて楽しいけれど…なんか、ちょっと物足りない。

「他に何かないの?」

そう催促すると、ライトは真剣みを帯びた目でジッと見つめてきた。

何か見定められているようにもみえるその視線に、思わず顔が強張る。

ライトは少しの間、何か考えるように目を伏せてから、再びこちらへ目を向けた。

「…あいつ、竹刀を握ると人格が変わるんだよね」

「なに、それ、面白い」

どんな感じに人格が変わるんだろう?
ものすごい殺気を放つとか?

見てみたいかも。


佐竹君のイメージがどんどん更新されていく。

そのたびにじわりじわりと興味がわいてくる。


(…なんでこんなに佐竹君に興味がわくんだろう?)

ふと、そんな疑問が脳裏をよぎったけれど、特にその答えを導きだそうとは思わなかった。

ライトは、フッと口元に笑みを浮かべた。

「へぇ…マジであいつに興味あんだな」

その一言で、ハッと我にかえる。

「それは…まぁ…、竹刀を持つと人格が変わるとか言われたら誰でも興味は持つよね」

なんだか…

苦し紛れな言い訳っぽい?


そんな感情を悟られないように、いつもの調子の平然を装う。

「"誰でも"ね…。オレの知ってる限り、あいつの話を真面目に聞いてくれるヤツって梅沢が初めてだよ」

「そう…なの?」

なんか…

無性に…

(恥ずかしい…)

なんとなくライトの表情が面白がってるようにもみえるのは気のせいだろうか…

なに、この、なんとも言えない空気…。

この場から逃げたくなって、とりあえず話題を変えようと目を泳がせていると、廊下からやたら目立つ声が響いてきて、そちらに目線を落ち着かせた。

…あ。

さっきトイレにいた子たちだ。

イラ子たちは目の細工が済んだようで機嫌が復活した様子。

数分前まで佐竹君のことでキレてたのが嘘のようだ。