「佐竹君って結構明るい人だよね」
「梅沢さんは結構面白い人だよね。それに、梅沢さんが笑ったの初めて見た」
「え?私、いつも笑ってるけど」
「いや、常に冷静な顔してるよ」
「訳すと無表情で冷徹でつまらない女ってことだね」
「はははっ!会話がループしてる!!」
私の言葉にツボに入ったらしく、佐竹君はお腹を抱えて大笑い。
気づけば、私も笑っていた。
さっきまで静まり返っていた図書室とは思えないくらいに、二人の笑い声が響きわたっている。
いつの間にか普通に話せてる。
ホント、不思議。
そんな中、図書室の扉が開きライトが顔をのぞかせた。
「待たせてわるいな」
「ん。大丈夫」
そう言って佐竹君は、読んでいた本を本棚へ戻しに席を立つ。
「さっき、すげー楽しそうな声が聞こえてきたけど?」
少しニヤけた顔でライトが佐竹君に言う。
「梅沢さんが面白いこと言うから可笑しくて」
面白いこと言った覚えはないんだけどな。
「ふぅん。楽しそうでなによりだな」
そう言ってライトは佐竹君の肩に腕を回して笑った。
その笑顔にはどこか優しさがにじみ出ている気がした。
こうしてると普通に仲良く見える気もするけど…
(あ、もしかして…)
ふと、一つ疑惑が浮かび、ドアの方へ向かう佐竹君たちの後ろ姿に問いかける。
「ねぇ…、もしかして二人って……友人以上の関係?」
私が濁した言い回しの意味を理解したであろう二人。
ライトは怪訝な顔で、佐竹君はポカンと口を開けて振り返った。
「んなわけねーだろ。どんな目で見てんだよ」
「梅沢さん、ライトとはただの友達だよ」
「あ、そう」
ボーイズラブには興味ないけど、もし二人がそういう関係なら、それはそれで良いのでは?と、思ってしまう。
多様性ですからね。
ライトが、はぁ…と、疲れたようにため息をついた。
「行こうぜ、佐竹」
「梅沢さん、また明日」
「あ、うん。また……あ!」
言いかけたところである事を思い出した。
不自然に途切れた言葉に、佐竹君は問うように首を傾げてみせた。
「昨日、日直の仕事ありがとう」
数分前に言いそびれていた言葉。
よかった、思い出せて。
言えて満足した私とは裏腹に、佐竹君は隠れている目をぱちくりとさせている様子。
少しして、フッと笑いを吹き出した。
「そのタイミングでそれ言う?やっぱ、梅沢さん面白いね」
数分前と同じように佐竹君は笑った。
(…あっ)
今、少しだけ見えた。
佐竹君の瞳が。
…目、笑ってた。
——初めて見た。
その瞬間、少しだけ胸の辺りが高鳴った。
この時の私は、まだ知らなかった。
この気持ちが、次第に変化していくことを。
