隣の席の佐竹くんには…


…会話が途切れた。
シーンと静まりかえる図書室。

窓の隙間から流れてくる風にふわりふわりと揺れているカーテン。

ページをめくる音だけが、やけに大きく響いていた。

なんだか漫画とかでありそうなシーンだ。

パターン的にはこの雰囲気の中、告白が始まるとかね。

さりげなく視線を本に戻す。
しかし、読んでいるフリをしているだけで、内容は全く入ってこない。

頭の中では…

(もしここで、『好きです』なんて言ったら佐竹君はどういう反応すんのかな?)

この状況が今読んでる小説のシーンと微妙に被っていて、意味もなくそんな冗談を考えて心の中でひっそりと笑う。

…あ。

(そういえば、日直してくれたお礼言うの忘れてた)

ふと、そんな昨日の出来事を思い出して、お礼を言おうと顔を上げたところで、

「梅沢さんとこうやって話すことって、今までなかったよね」

先に佐竹君の声が図書室に響いた。

突然のこともあって思わずドキッとしてしまったが、表情は相変わらずの無表情。

視線が合っているのか定かではない佐竹君の顔を見ながら「そう…だね」と、軽く返答した。

今まで話す機会がなかった佐竹君と、こうしているのがとても不思議だ。

佐竹君は少しの間の後に言う。

「実は…オレ、今まで梅沢さんのこと無愛想でちょっと怖い人なのかなって思ってたんだ」

「えっ」

この人、今、さらっと普通に失礼なこと言ったよね?

やはり、自分は”怖い”とか”無愛想”という印象が強いようだ。

まぁ、そう見えてしまうものは仕方ない。

(生まれつきこんな顔ですから。実際、愛想だって良くないし)

心の中で自嘲気味に笑う。

「でも話してみたら違った。意外と話しやすいし、怖いって感じもなかった」

「……」

「怖いとかじゃなくて、落ち着いてるんだね」

そう言ったあとに佐竹君は、はははと柔らかく笑った。

…なぜだろう。
今まで何を言われても気にしなかったのに…

ちょっと嬉しい…かも…?

胸の辺りに込み上げてくるような温かさを感じた。