隣の席の佐竹くんには…


「部活中だよ」

「梅沢さん、文芸部なんだ。でも一人?」

「うちの部、帰宅部同然だから。佐竹君こそ部活はどうしたの?」

「今日は用があって休み。久しぶりにライトと帰ろうとしたらライト、先生に捕まっちゃってさ」

話しながら棚に並んだ本を端から順に見て選んでいる佐竹君。

「長くなりそうだったから、それまで本でも読んで待ってようかと思って」

「そっか」

佐竹君は気になった本があったようで、それを取り出すと、私が座っている席の斜め前の席へ腰かけた。

本を読み始めた佐竹君をチラリと見てみる。

相変わらず前髪長いなぁ。

文章が読みづらそう。
せめて本を読む時くらい前髪上げればいいのに。

ひっそりと観察していると、不意に佐竹君が顔を上げて、心臓がビクリとはねた。

前髪の奥から、こちらを射抜くような視線を感じた。

「梅沢さんはどんな本読んでるの?」

「えっ。あぁ…私は恋愛ものを」

「へぇ、なんか意外かも」

意外って…。
興味ないと思われていたのか?
別にいいけど。

「佐竹君はどんな本読んでるの?」

「オレは”徳川家が現代へ”って本。徳川家の一人が現代にタイムスリップしてくる話。面白いよ」

「ふぅん。面白いってことは前にも読んだことある本?」

「うん。五回は読んでるかな」

読みすぎじゃない?

つっこむ気にもなれなくて、「へぇ」とだけ相づちをうった。