隣の席の佐竹くんには…


ライトが顔を覗き込んできた。

「なんか顔色悪くねぇか?」

「この人混みにやられて私のHPゲージゼロ…」

「HPゲージってお前…」

ゲームかよ、とつっこみを入れてくるライトの隣で佐竹君が思い出したように言う。

「そういえば今日、限定商品が売ってるって言ってたっけ」

「それかー…」

どうりでいつもより混んでると思った。

「買いに行くなら、この人だかりが少なくなってからのがよさげだね」

「それまで待ってたら、ちくわパンなくなる」

「病み上がりなんだから無理しないほうがいいよ」

前髪で佐竹君の表情は確認できないけど、声の調子から心配してくれているんだと解る。

しかし、そんな佐竹君の気遣いを無視して…

「ちくわパンは私の命なの。こんな飢えた人たちに渡したくない」

自分の体調を上手くコントロールできないもどかしさと、お腹空きすぎて、半ばやけくそになっていた。

ついでにお腹もやけくそにぐぅーと鳴った。

「今日は自分の体調のこと優先に考えなよ」

「私、ちくわパンじゃないと今日一日やっていけない」

「もう一日の半分は終わってるけどな」

隣でライトがつっこんでくる。

それでも構うことなく、再び人混みの中へ向かおうとする。

が、

「ダメだよ」

二人に背を向けたところで佐竹君に腕を掴まれた。

その行為にビックリして振り向くと、表情は前髪で隠れて見えないけど、真剣な雰囲気をまとった佐竹君に思わずドキッとしてしまった。

「ちくわより自分の命の方を大事にしなきゃ」


この人、言うことが大袈裟すぎ。