完璧な三神くんは、愛だけがわからない。


そして冒頭へ。

「嘘だ嘘だ嘘だ……っ」
今日の出来事が、どうしても現実だと受け入れられなくて。

涙は、走る勢いに押されるように頬を横切った。
怒りではない、悲しみでもない、予想していなかった出来事に混乱して流れる涙。自分でも流れている自覚がない。


「……どうした、何かあった?」
「っ」

玄関先にくるちゃん。結構な時間がかかっちゃっていたのに、待っていてくれたんだ。優しい眼差しに安心する。
大好きなくるちゃん。くるちゃんのことは信頼してる。

だけど

〝――憧れの三神くんが、付き合ってない人にも簡単にキスできちゃう最低さんだったの〟とは何だか言えなかった。

だって、恋愛経験のない私とって、今回のことは刺激的な出来事で、一瞬何が起こったのか理解できなかったから。


「ごめん、今はちょっと言えなくて。今度また話す」
「……わかった」

――ごめん、くるちゃん。

さっきの三神くんと女の子の光景が脳裏にこびりついて離れない。
私の心は、ドキドキ、と音をたてていた。